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サステナビリティSeptember 8, 2021

バーチャルでひも解く世界 13: バーチャルツインで脱炭素を「見える化」する

バーチャルツインは温室効果ガスの削減目標の達成に有効なアプローチです。
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Avatar 小林 敦志 (Atsushi Kobayashi)

ダッソー・システムズで産業機械業界のコンサルタントをしております、小林 敦志です。主に海外のプロジェクトや日々のニュースまたは当社ならではの情報を、私の目利きでお伝えしながら、日々変容する社会・製造・ITのトレンドを皆様に共有していきたいと思っています。

今回は地球温暖化。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は今年8月9日に公表した報告書で、人間が地球温暖化を引き起こしたことは「疑う余地がない」と断じています。現実に今も、地球温暖化が影響していると思われる火災や水害が起こっており、温暖化阻止のための取り組みは急務となっています。

カーボンゼロ、脱炭素と言われる生産・消費活動にともなう二酸化炭素排出量を減らそうという取り組みは、1992年のブラジル・リオデジャネイロでの国連開発環境会議(地球サミット)が始まりです。その後、1997年の京都議定書、2015年のパリ協定と削減目標が次々と定められましたが、現在においても目標達成までの道筋は不透明であり、個々の企業はこれまで以上に抜本的な対策をとって脱炭素に取り組むべき状況にあります。

ビジネスの世界においては目標達成には数値による目標管理が有効ですが、脱炭素でも数値管理が必要です。

ダッソー・システムズも今年、SBTi, Science Based Targetsイニシアティブにコミットした目標が承認されました。(プレスリリース

・2027年までに、2019年基準で、自社事業で発生する(スコープ1、2)GHG排出量を34%削減、出張および従業員の通勤(スコープ3)GHG排出量を23%削減

・2040年までにネット・ゼロ・エミッションを達成。科学的根拠に基づく目標を達成した後の残余の排出量を、3DEXPERIENCEプラットフォームを活用した技術的ソリューションを利用して炭素除去で達成

いくつか用語の解説をします。SBTは科学と整合した温室効果ガスの削減目標で、SBTiは推進するイニシアチブ(団体)になります。

国としても目標設定ではなく、企業としての目標設定を行い、それを認証してもらい、継続的に報告することで、目標設定を実施した企業として認められます。

GHGはGreenhouse Gas、温室効果ガスであり、二酸化炭素だけでなく京都議定書で排出削減の対象となったメタンなども含みます。SBTにおけるスコープ1は、事業者自らによるGHGの直接排出、スコープ2は供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3はそれ以外の間接排出を示します。

日本からは、2018年にサントリーホールディングスがSBTの目標値を”コミット”しているのが最も早く、有名な企業ではソニーや日立が”コミット”を、産業機械ではコマツが目標値を設定しています。

日本語の情報はWWFの日本のサイトから参照できます。

日本国内のニュースからは、エネルギー政策の実現が不明瞭な点や今後の規制しか報道されません。しかし、SBTiが示す脱炭素の効果は幅広く、収益の向上/投資家の信頼向上/イノベーション促進/規制の不確実性の低減/ブランド評価の向上までに及びます。これらは目標ではなく2018年時点のアンケートからの実績で示されています。

SBTにコミットすることで、ブランドイメージがあがるだけでなく、収益に貢献するのであれば、日本の企業、製造業は必ず参加すべきかと思います。

では、具体的に何ができるか?アニメーションを使ったこちらのビデオReduce CO2 by 7.5 Giga tons using Virtual Twinsが参考になります。

こちらのビデオの中では、工場や事業所で利用する電力・動力を監視し削減するだけでなく、水使用量、廃棄物、電力の削減に始まり、自社製品および梱包の軽量化や物流の最適化があげられています。脱炭素は総力戦です。従来、工場の経費として電力はコストとして認識されていたと思いますが、製品コストの1/3を占めるとも言われる物流費はどうでしょうか?物流経路を最適化するだけでなく、製品の軽量化を合わせて輸送時の形状まで設計時に考慮できていますでしょうか?

カーボンゼロ、地球の平均気温を1.5℃下げるという大きな目標を与えられると、どう対応してよいかわからなくなります。企業単位や自部門から、自社製品へと、小さな単位に落とし込むことで、より身近になり、自分達が貢献できることを見つけ出すことができます。逆に、それら小さな改善を積み上げ、自社の収益や、身近な集中豪雨が少しでも減らせるなら、自分自身の目標として“コミット”すべきことだと思います。そしてそれらが企業全体でどのように実施可能かを検証するために、バーチャルツインとプラットフォームの使用は最も有効なアプローチとなります。

海外の様々なトレンドを紹介する「バーチャルでひも解く世界」、いかがだったでしょうか。産業機械業界担当コンサルタントの小林でした。

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