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航空宇宙・防衛March 17, 2021

バーチャルでひも解く世界 8:ドローンは脱炭素社会の夢を見るか

スタートアップ、XSun社のソーラードローン開発事例をご紹介します。
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Avatar 小林 敦志 (Atsushi Kobayashi)

ダッソー・システムズで産業機械業界のコンサルタントをしております、小林 敦志です。この「バーチャルでひも解く世界」では、主に海外のプロジェクトや日々のニュースまたは当社ならではの情報を、私の目利きでお伝えしながら、日々変容する社会・製造・ITのトレンドを皆様に共有していきたいと思っています。

みなさまは脱炭素社会の実現についてどう考えておられるでしょうか?

内閣府が昨年、2050年までのカーボンニュートラル達成という目標を発表していますが、EUをはじめ世界の多くの国は脱炭素への転換を着実に進めています。私たちは企業人としても個人としても、脱炭素化を目指すという現実に対応しなければなりません。

社会の転換期には、これまでの常識を超えるアイデアが形になる時期でもあります。例えばフランスのスタートアップXSun社では、ソーラーエネルギーだけで完全に自律的に飛行するドローン(UAV, 無人飛行機)を開発しています。まずはビデオをご覧ください。

ビデオ内で紹介されている機体、SolarXOneは12時間の耐久試験飛行に成功しています。またペイロード(積載物)を積んだ状態でソーラーエネルギーのみで600kmも飛行しており、長距離でクリーンなカーボンフリー・ドローンの実用化が迫っていることを確信できます。

制御的にも、エネルギー的にも完全に自律できるドローンの用途は様々あり、特にな区域の状況を把握する上で有用です。たとえばパイプラインや鉄道、電力網といったインフラの監視、農場での生育状況の把握、山岳救助などの人が入りにくい場所での捜索、環境汚染の状況の把握、国境のなどが想定されます。

もしみなさんがこういうドローンを開発しようとすると考えた場合、まずどこから設計に着手されますか?

バッテリー、空力、太陽電池、複合素材の成形や、地上との通信など、ものづくりの観点から入りますか?それとも離陸や着陸時のシナリオ、エネルギー消耗時の代替案などのユースケースから入りますか?もしくは、投資家への説明でしょうか?利用する空域での航空に関する諸規制もあらかじめ踏まえておく必要がありますね。

スタートアップであるXSun社にとっては、上に挙げたすべてが等しく重要でした。

では彼らの場合、日本語で言う「機能の取り合い」や、「機能の割り付け」はどうしているのでしょうか?

SolarXOneは従来型の飛行機とは異なります。主翼一つとっても、翼の上部にソーラーパネルがついていますが、この実装を決めるためだけでも大変です。おおもとの要件である航続距離、飛行速度から算出する必要な動力量、それに必要な搭載モーターの重量などから算出する電力需要、さらには地上制御局との通信やセンサーへの電力、これらが電力への需要となります。一方、巡航高度、日照条件などから獲得できる電力量、言い換えると電力の供給のバランス、最適解を決めなければなりません。これに伴って、構造、形状、重心の位置をはじき出し、風の流れを確認しながら発熱量も確認することで、ようやくソーラーパネルが持つ能力を最大限に引き出すことができます。ソーラーパネルの主担当はエレキ(弱電系)を理解するだけでは不十分で、重量や構造、形状について流体力学の専門家の力を借りなければなりません。さらに開発には常にスピードが求められます。

XSun社はすべての技術情報をの1カ所に集約することで、プロジェクトメンバーがいつでも最新の情報を簡単に取り出し、確認できるようにしました。しかも、1度確認した方法を自動化しておけば、再確認の作業をもれなく簡単に実行できます。

また、スタートアップの企業は、投資家への進捗の説明やデモを実施して、常に自分たちの事業の社会的と投資先としての魅力を主張し続ける必要があります。こうした際には”Monitoring Your World with Solar UAVs by XSun“のような360度動画は有効でしょう。

ビデオ自体は、非常に楽しく、専門家でない私でも、この高度で飛べるとすると地上の様子が、いろいろモニターできるな、と想像できます。

スタートアップの企業は、技術的にもビジネスの継続性という観点でも強いプレッシャーの中で開発を進めています。しかし脱炭素社会に対応する解をいち早く提案することで、その後の自社のビジネスを飛躍的に伸ばすチャンスもあります。XSun社の社員数はわずか13名であり、全員が異なる技術、法務、得意分野で精一杯の努力をしていることが伝わってきます。こうした中で、技術、設計、シミュレーションの情報やバーチャルツインを共有できる3DEXPERIENCEプラットフォームが役立っていることを知ると、感慨深いものがあります。

海外の様々なトレンドを紹介する「バーチャルでひも解く世界」、いかがだったでしょうか。産業機械業界担当コンサルタントの小林でした。

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