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都市・公共September 6, 2021

スマートシティのその先へ:ダッソー・システムズが目指す「サステナブル・シティ」とは?(前編)

都市・エリアの計画と開発におけるバーチャルツインの活用の最新状況と、当社が取り組む「サステナブル・シティ」について紹介します。
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気候変動、感染症の拡大、都市部への人口集中などの影響により、都市をめぐる課題は複雑化しています。今日、政府・自治体だけでなく様々な利害関係者が協力し、これらの対応に迫られています。特に新型コロナウイルス感染症の拡大により、政府・自治体による迅速かつ緻密で高度な意思決定の重要性が浮き彫りとなったことから、将来の危機に備えた戦略づくりの一環として、都市計画と開発においてバーチャルツインを利用する動きが広がっています。民間企業においても地域やエリアの効率化や活性化を図る新たなビジネスモデルを開発するためにバーチャルツインの活用が進んでいます。

3Dによるバーチャルツインを構築した場合、そこで得た情報をどのように利活用するべきなのでしょうか。「都市の3Dモデルによる見える化はあくまで過程であり、目的ではありません」 ― そう強調するのは、ダッソー・システムズ日本法人の建設・都市・地域開発 グローバル・マーケティング・ディレクターである森脇 明夫です。今回のブログでは、都市・エリアの計画と開発におけるバーチャルツインの活用の最新状況と、ダッソー・システムズが取り組む「サステナブル・シティ」について紹介します。


都市・エリア計画と開発におけるバーチャルツイン活用の背景と現状について

今日、都市・エリアの計画と開発において、自治体やエリア開発に関わる多くの担当者は、複雑で多岐にわたる課題を多数の関係者間で調整し、整合性がとれた開発を進めることに難しさを感じています。現在、世界の大都市だけではなく、小規模の地方自治体やエリアで3Dを活用して課題を解決する動きが活発になってきており、これらの背景には大きく3つの要素があります。

まず、都市における人口集中の問題です。最近、総務省が発表した資料によると、世界の都市圏の人口割合は年々増加しており、世界の都市人口は2030年には約50億人を超えると推測されています1。このように都市圏の人口過密化が加速しており、より多くの人が都市に流入することで住居の問題、多様なモビリティニーズの高まり、効率的なエネルギーの消費とその管理など多くの課題が顕在化されてきています。

二つ目の要素としては、地球温暖化による気候変動の影響です。世界全体では、集中豪雨や台風の増加が毎年のようにニュースで話題になっています。日本でも近年は猛暑が続き、環境省によると、日最高気温30度以上の真夏日と日最高気温35度以上の猛暑日の年間日数も増加傾向にあると言われています2

第三の要素は、新型コロナウイルス感染症の影響です。2020年以降の世界的流行により、不測の事態にも対応できる街づくりの重要性が問われました。今年3月に当社のブログでも紹介しましたが、緊急事態に対する国・行政の対応が、国の社会経済や人々の生活を直接左右します。そのため、感染症の状況を理解し、迅速な情報共有や意思決定が喫緊の課題となっています。これらの3つの要素が背景となり、都市・エリア開発におけるバーチャルツインの活用が急速に進んでいます。

都市・エリア開発に関して、世界共通の課題は何でしょうか。

例えば、官公庁において、縦割り行政、技術的制約、予算的制約の3つがあると考えています。今日、多くの国・地域では、行政機関は縦割りで組織されており、役割分担や情報共有がそれぞれの機関毎に完結しています。これにより、都市・エリア開発に関するプロジェクトも、組織横断型で進めることが困難となり、全体を把握できないなどの問題が生じています。また、民間のエリア開発に関しては、今後の技術革新を見越して新たなビジネスモデルを開発したいニーズが高まっていますが、自社技術だけではエリア内の様々な事象の相互関連性を分析することや、投資効果の予測が難しい、といった課題があります。検討項目としては新規開発計画の検討、脱炭素につながるエネルギー消費の管理、新しいモビリティの運用、感染症の分析と対策、防災対策など多岐にわたります。

日本固有の課題とは?

中国やシンガポールは行政のトップダウンで都市計画や開発が進めやすい状況にありますが、日本では、関係者間での合意形成が複雑でより時間がかかる傾向があると思います。また、新興国に見られるような大規模な新規の都市開発もありますが、既存の設備の再利用やIoT技術を活用した先進的なエリア開発も比較的多い気がします。日本に限った話ではありませんが、洪水などの災害対策や地方も含めた、新たなモビリティの在り方などが最近注目を集めていると思います。

課題解決に向けてどのような仕組みがありますか?

都市は電気・ガス・水道・交通機関など、多種多様なシステムの集合体です。あらゆる要素が人々の生活と密着しており、それらを運用していくには、それらを支える基盤となる統合的なシステムが不可欠です。

様々なシステムが存在する都市はシステムを統合するシステムと言える

そのシステムはコモン・データ・エンバイロメントと呼ばれるデジタルのマスターデータで統合された都市のバーチャルツインです。このデータ環境には関係者とのインタラクションをする上部レイヤーと都市の様々な情報を集約する下層レイヤーがありますが、最も重要なのは中間に位置する「協業のレイヤー」です。3D都市モデルによる見える化にとどまらず、意見交換、交流、検証、承認作業をデジタルにトラッキングできることが重要です。

データを集約し見える化するだけでなく協業、意思決定、承認をするためのマスターデータが必要

そのコモン・データ・エンバイロメントにより、官公庁・行政、開発者、地域住民、専門家、建築・建設会社、関連団体など、多くのステークホルダーが想定するシナリオなどの情報共有を行い、それぞれの知見から意思決定や合意形成を経て、プロジェクトを進めていくことが可能になります。

「スマートシティ」ではなく、なぜ「サステナブル・シティ」を支援するプラットフォームとして打ち出しているのでしょうか。

スマートであることは重要ですが、ダッソー・システムズでは、人々が住むエリアの効率性や生産性を高めるだけではなく、持続可能で成長が可能な都市や個人の生活を実現する環境を整え、人々の生活を豊かにする街づくり(=サステナブル・シティ)の実現がゴールであると考えています。ダッソー・システムズは、都市やエリアの見える化にとどまらず、これらの合意形成プロセスに必要なシステム全体の統合と、その活用に向けたプラットフォームを提供し、「サステナブル・シティ」を推進しています。

3Dモデル上でビルのエネルギー効率を検証している画面

後編に続く)


ご参考リンク:

ダッソー・システムズの建設・都市・地域開発業界について

建築・建設 | ダッソー・システムズ® (3ds.com)

1 出典:総務省「令和2年 情報通信白書」

2 出典:環境省「令和2年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」

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