※本ブログは、SIMULIA Blog (英語版)で既に発表されたブログの日本語参考訳です。
Q: どのような業界課題がモデリング&シミュレーション (MODSIM) の活用拡大を促しているのでしょうか?
A: 私がお客様のオフィスや各地のイベントでお会いすると、多くのお客様が共通する課題を抱えていることに気づきます。
もちろん時間、コスト、世界経済の動向、環境規制が要因となり、あらゆる業界でモデリング&シミュレーション(MODSIM)の活用が拡大しています。
製品開発企業は、プロトタイプの作成を減らす(あるいはゼロにする)ことで、時間、コスト、廃棄物を削減し、同時に運用中の製品障害のリスクを軽減することを目指しています。
また、製品開発組織では、設計プロセス全体においてプロセス効率、意思決定力、製品品質を向上させるためのソリューションを模索しており、開発サイクルの初期段階からシミュレーションを活用するケースが増えています。
さらに、シミュレーションソリューションによって恩恵を受ける重要な分野として、持続可能性 (CO2 排出削減、グリーンエネルギーなど)、バッテリー開発、新材料のイノベーション、コネクテッドサイバーシステムなどが挙げられます。
Q: シミュレーションに求められる業界の要件にはどのようなものがありますか?
A: 各業界には固有の要件があり、さまざまな業界が、堅牢なマルチフィジックス/マルチスケールのシミュレーションアプリケーションを活用することで、自らの課題解決に取り組んでいます。
たとえば、自動車業界では、車両フリートの排出規制を満たすために、より多くのシミュレーションが求められています。
このため、内燃エンジン、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、さらには水素エネルギーの研究も含め、車両ラインナップ全体で複数のパワートレイン構成の開発管理が必要となります。
ドライバーアシスタンスや完全自動運転車の開発といったコネクテッドビークルシステムにおいても、エレクトロニクスおよびメカトロニクス分野でのさらなるシミュレーションの活用が不可欠です。
航空宇宙・防衛産業では、持続可能な航空機への需要の高まりと、通信、地理情報のマッピング、気候予測のための低軌道衛星の普及による影響を受けています。
衛星や宇宙開発プログラムの増加に伴い、高い信頼性を持つ電子機器や、軽量かつ耐久性に優れた再利用可能な打ち上げロケットが求められています。
ライフサイエンス&ヘルスケア業界では、高齢化社会のニーズに対応するため、医療機器およびインプラントの開発が進んでおり、成長を続けています。
インフラおよびエネルギー業界では、電気自動車(EV)の充電需要の増加、AI アプリケーションの拡大に伴う計算能力の向上、そして企業や家庭に電力を供給する送電網の強化といった課題に対応するため、代替エネルギー源および新しいエネルギー源の開発と維持管理が求められています。
またCO2 回収・貯蔵(CCS)ソリューションの検討や、プラントのメンテナンスおよびサービス適合性要件の達成といった業界課題においても、モデリング&シミュレーション(MODSIM)が重要な役割を果たしています。
ハイテク産業では、半導体およびモバイルデバイス分野の成長に伴い、プロセッサ (チップ) の設計およびパフォーマンスを向上させるためのシミュレーションが求められています。
これには、サイズ、設計領域、無線通信、電子干渉、熱、湿度、落下試験など、さまざまな機能要件に関連する要素が含まれます。
消費財業界では、環境にやさしいリサイクル可能なパッケージへの需要が高まっており、金属、プラスチック、紙、ガラス、液体の複雑な挙動や、関連する製造プロセスを分析することで、材料使用量の削減や、製造・保管・輸送中のパッケージの信頼性向上といった成長機会が広がっています。
Q: シミュレーション分野におけるテクノロジートレンドとはどのようなものだとお考えですか?
A: 私たちのお客様は、デジタルトランスフォーメーション(DX)イニシアチブを活用して、製品開発プロセスの改善を目指しています。
統合モデリング&シミュレーション (MODSIM) は、その変革における重要な部分です。 MODSIMは、3DEXPERIENCE プラットフォーム上の単一のユーザーエクスペリエンス内で、共通のデータモデルを基盤にモデリングとシミュレーションを統合します。
その最終的な目標は、製品開発プロセス全体を俯瞰し、部門間の障壁を取り払うことにあります。
近年では、部門ごとに「サイロ化」された作業から、より統合されたアプローチへと移行することが、一般的な流れとなっています。
人工知能(AI)と機械学習 (ML) の進歩は、単なるシミュレーション業界のトレンドではなく、将来におけるシミュレーションの活用方法の基盤となります。
これにより、AI/MLモデルのトレーニングと検証において、現在および将来にわたりシミュレーションの活用が不可欠となり、シミュレーションの需要はさらに拡大していくと考えています。
さらに、AI/ML モデルは継続的なメンテナンスと追加トレーニングが必要であり、これがシミュレーション活用のさらなる推進力となります。
また、シミュレーションモデルは、AI/MLの仮想検証用データを提供する役割を担っており、 これは、現在の検証・妥当性確認プロセス(Verification & Validation)において、シミュレーションと物理テストが併用されている方法と同様のアプローチです。
3DEXPERIENCEクラウドプラットフォームの利用は、大規模企業から小規模企業まで幅広く拡大しています。
エンドユーザーからは、3DEXPERIENCEクラウドプラットフォーム上の SaaS(Software-as-a-Service)およびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)へのアクセスを高く評価しているという声を聞いています。
これにより、クラウド上での「キックスタート」として機能し、いつでも、どこでも、どのコンピューターからでもシミュレーションを実行できるようになります。
さらに、ローカルのコンピューターやネットワークで利用可能な処理能力を超える計算リソースへアクセスでき、特に、ローカルのコンピューティングクラスターに投資していない小規模企業にとっては大きなメリットとなります。
3DEXPERIENCEクラウドプラットフォームを活用することで、製品開発組織はオンプレミスのコンピューティングインフラにかかるコストとメンテナンス負担を削減しながら、より多くのシミュレーションを高精度で実行することが可能となります。
企業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が、単にクラウド上のシミュレーションソフトウェアやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)リソースにアクセスするだけではないことを理解する必要があります。
DXとは人・プロセス・データをつなげることでもあるのです。
必要な設計およびシミュレーションアプリケーション、関連する機能要件やシミュレーション結果は、設計者、プロセス管理の専門家、解析のエキスパート、製造チームなど、すべての関係者が3DEXPERIENCEクラウドプラットフォーム上で利用可能です。
これにより、世界のどこにいても、タイムゾーンを超えてリアルタイムかつ安全にプロジェクトでのコラボレーションが可能となります。
その結果、業務効率の向上、手作業によるエラーの削減、そして自信を持って革新的な製品を迅速に市場投入できるようになります。
2024年も終わりに近づいていますが、11月にインドで開催されるイベントや2025年初頭のMODSIM Summitなど、今後のイベントでお客様と直接お会いし、
「どのように一緒に未来のイノベーションを実現できるか」について話し合うことを楽しみにしています。
業界の変化とテクノロジーの進化に伴い、多くの課題が生まれていますが、シミュレーションは常に進化し、変革を続けています。

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彼はドイツ・ミュンヘンにあるMTU Aeroengines で空気力学および構造解析を主な担当領域としてキャリアをスタートしました。
その後、ヨーロッパの EXA Corp にて複数のテクニカルディレクター職を歴任し、2014年には航空宇宙産業担当マネージングディレクターに就任しました。
EXAが2019年にダッソー・システムズへ統合された後は、SIMULIAの航空宇宙部門責任者およびSIMULIA GEOリーダーEUROCENTRALを務めました。