ManufacturingJuly 10, 2023

北九州高専リカレント教育の振り返り(後編):IoTとMOM

「MOMとIoTとの関係」、そして実際の講義の様子について、ご紹介いたします。
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Avatar 阿部 洋平 (Yohei Abe)

「Industry4.0」「製造DX」「スマートファクトリー」など、さまざまな言葉で語られる製造領域へのデジタルの取り組み。その中心を走ってきたのは、「IoT」でした。では、「IoT」だけで目指す姿は実現可能なのでしょうか?なぜ、「MOM」が必要なのでしょうか?「IoT」と「MOM」の違いを理解することにより、進むべき一歩が見えてきます。

みなさんこんにちは。DELMIA Industry Process Consultantのチームでリーダーをしている阿部です。「MES」「MOM」の解説を北九州高専リカレント教育の振り返りを通じて解説をしてきた当シリーズは今回が最終回となります。「MOMとIoTとの関係」、そして実際の講義の様子について、ご紹介いたします。

前編・中編はこちら▼

北九州高専リカレント教育の振り返り(前編): なぜMESが重要なのか?

北九州高専リカレント教育の振り返り(中編):なぜMESではなくMOMなのか?

みなさまは、製造領域におけるIoTのソリューションにどのような印象をお持ちですか?

IoTの事例でよく出るのが、センサー情報を使っての稼働情報の取得です。この稼働情報を取得し、見える化を行い、改善を進めることで、設備単体の稼働率向上を大いに期待することができます。また、特にここ数年注目を集めたのが、「予兆保全」の考え方です。実際に、『DX白書2023』においても、多くの企業が予兆保全(白書内では「予防保守」)に取り組んでいることがわかります。一方、ここで一つ注目なのが、この予兆保全、日本企業は米国の企業と比べると導入の目的とする企業が大変多いのが特徴です。

ここで、改めてMOMの位置づけを説明いたします。IoTは、下記の図では、各装置からの実績関連データを取得する取り組みで、「縦」の「EQC」のデータ取得が主たる目的となります。一方、MOMはそれに加え、「横」の「PQC」の位置づけとなり、モノの流れとそれに関わる5M情報の指示を出し実績情報を取得します。この両方のデータが揃って初めて、より高度な分析が可能になると考えております。例えば、装置A-1で製造した仕掛品を装置B-1に投入して品質に問題があった場合、装置B-1のEQCデータだけではなく、装置A-1における5M情報があることにより、精度の高い分析が可能になります。また、AI等を使った品質データの分析やフィードバックにおいても縦の軸だけでは装置の稼働安定には貢献できても製品の品質に直接寄与するような改善に持ち込むことが難しくなります。そのためにも下記の図にあるようなPQCとEQCのクロス管理が重要になります。

以上簡単ですが、IoTとMOMに関するご説明になります。

さて、ここからは、講義の様子のご紹介となります。大きく3週に亘って行われた講義ですが、

初回はミクニワールドスタジアム北九州(上記写真)、以後は北九州高専のキャンパスで行われました。

コロナ禍で行われたこともあり、オンサイトとオンラインのハイブリッド型で実施のため、九州の参加企業は多かったものの、オンラインでは、全国から参加いただきました。

北九州高専での講義は、オンサイトの参加者が少ない時もありますが、現場担当者の方から経営層の方まで幅広く、常に50名程の社会人の方々に参加者いただき、活発な意見交換を行うことができました。特に、初日の段階で、受注生産型のビジネスを展開する参加企業が一定数おり、MOMだけではなく、BOMに関する興味関心も高いことがわかり、2回目以降からはBOMの内容を厚くするなど、参加者のニーズに合わせて講義を実施することもできました。

参加者からも多くの前向きなコメントを頂き、一企業として、ソリューションを提供するだけではなく、ユーザーとの接点を持ち、普段聞けない声を少しでも多く聞き、それに応えていくことの重要性を改めて感じました。

準備に尽力していただいた、チームメンバー、特に、初の試みの中走り回ってくれた担当営業に感謝を述べたいと思います。

さて、最後になりますが、当プログラムを一緒に企画いただいた、北九州高専の久池井先生のコメントを載せさせていただきます。

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文科省の「DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業」に採択され、ダッソー・システムズ様と協力して「第4次産業革命 ものづくりマネジメント ビジネスクール」を実施しました。ダッソー・システムズ様とは、2019年から開講している「第4次産業革命 エグゼクティブ ビジネスクール」でもご協力いただき、日本の産業界における課題に共感しています。その課題が、日本国内におけるMOM/MESの普及です。

このため、MOMを中心とした「国際標準デジタルものづくりの管理手法」を学ぶカリキュラムを開発しました。座学だけでなく、本校で導入しているMOM(DELMIA Apriso)を活用した実機実習も組み合わせた実践的な教育を実施しました。豊富な実務経験を持つ講師が、国内外の事例を交えながら工夫された講義を行い、受講生から高い評価と満足度を得ました。そのため、2023年度も開講する予定で準備を進めています。

多品種化・受注生産化・多拠点化・海外展開がますます進む現代のものづくりにおいて、「物・情報・人の配置と流し方」を管理する「製造マネジメントテクノロジー」であるMOMを駆使することで、「経営」と「製造現場」の科学的なコミュニケーションを牽引する人材を育成できると考えています。

さらに、社会人のリカレント教育に加えて、次世代エンジニアリングを担う高専の学生にもデジタルものづくり教育のカリキュラム導入を促進しています。今後は、全国の高専に対してMOMの概念を普及・定着させる取り組みを行い、MOMを活用して全国の高専のものづくりセンターや実習工場と連携する構想を描いています。

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改めまして、久池井先生にも御礼の言葉をこの場を借りて述べさせていただきます。

今回のブログはここまでとなります。今後また、DELMIAブランドとして、日本の製造業のため、様々な取り組みを行って参りますので、楽しみにしていただけると幸いです。

【参考情報】

(2) デジタルものづくりの実現を目指す人材育成 北九州工業高等専門学校 | ダッソー・システムズ – YouTube

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