サステナビリティMarch 24, 2021

【SDGsとデジタル化の掛け算】2: SDGsを見据えた世界の変化

人間の食料消費を少し深掘りしてみましょう。
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Avatar 立田 新 (Arata Tatsuta)

ダッソー・システムズでサプライチェーン・生産技術・生産管理・製造実行領域(DELMIA製品)でコンサルタントをしている立田です。

このシリーズでは持続可能な世界創り(SDGs)を見据えた社会の変化やそれを支える当社の理念経営、ビジョン、テクノロジー、サービスなどについてできるだけ分かりやすく語っていきます。

前回、現時点では「地球が持っている生産力(復元力)をはるかに超えて、人間が消費活動を続けている」という話をしました。SDGsは人間の消費活動以外にも幅広く目標を定めていますが、分かりやすく人間の食料消費を少し深掘りしてみましょう。

人類全体の食料消費量は世界人口x一人当たりの平均消費量で計算することができます。もちろん一人ひとりの消費量には大きな偏りがあり、栄養過多の人がいる一方で栄養失調・飢餓に苦しんでいる人(SDG2)もいます。また、人間のために生産された食料の約3分の1に当たる年間約13億トン(*2)が、毎年廃棄されています(SDG12)。

なおSDG2やSDG12といった表記は、それぞれの課題がSDGsの17の目標の中のどれに当たるかを表しています。(SDG2であれば「飢餓をゼロに」、SDG12であれば「つくる責任つかう責任」と関係する、という意味で記載しています)

Harvard Business Review(*2)によると世界人口は2016年の73億人から2050年には97億人へと33%増加し、あわせて食料需要は59%から98%増加すると予想されています。また人々のQoL(Quality of Life:生活の質)が向上していくということも想定されるため、食品以外の消費量、それらの生産に必要となる資源量が増えていくは明らかです。現時点で私たちは「地球が持っている生産力(復元力)をはるかに超えて」いる状態でありながら、今後、いかに人類全体の食料需要を満たすことができるでしょうか?

QoLを引き上げながら資源の消費をいかに減らしていくかという背反する命題を両立さするにはどうしたら良いでしょうか?その答えが 「デジタル・バーチャルx4Cs=最適化社会」と言えます。

ここで今後のキーワードである「デジタル・バーチャルx4Cs=最適化社会」を現状と対比して紹介しておきたいと思います。

デジタルの対義語はアナログ、バーチャルの対義語はフィジカルです。また、4Csを理解する上でポイントとなるのは情報の伝わる速度や伝播性(多数に伝えられる特性)、文脈依存性(特定のグループだけに伝わる特性)、加工・複製性、限りのない検証性の違いです。

4CsはConnected(つながっている、首尾一貫した)、Continuous(持続的、継続的)、Contextual(個別対応)、Circular(循環的)の4つのCを意味しています。

4Csをキーワードごとに紐解いていきましょう。Connected(つながっている、首尾一貫した)の対義語はDisconnected(分断された)です。Connectedであるか否かという観点は、インターネットとのつながりの有無、製品間・会社間・部門間などの間でのつながりの有無、それらが連動することによる一貫性の有無を意味しています。

Continuous(持続的、継続的)の対義語はOne-time(一度きり、売り切り)です。この観点は製品やサービスを提供した後も顧客との継続的な接触や情報収集、改善・価値提供がなされるか否かを意味しています。

Contextual(個別対応)の対義語はMass(マス、全体)です。これは個別のニーズや状況・状態(文脈)にあった対応が効率的にできているか否かを意味しています。ここでいう個別は日常生活であれば人一人ひとりであったり、工場の現場であれば作業員一人ひとりや設備一台一台などを意味しています。

Circular(循環的)の対義語はLinear(直線的)です。これは資源や製品の流れという観点です。使い終わった資源や製品を廃棄するだけであれば「一方通行」の「直線的」な流れであり、使い終わった後に全体または部分的にでも再使用(Reuse)・再生使用(Recycle)・熱回収(Thermal recycle)できるようなら「循環的」となります。

人口が増え、消費量が増えていく中で、人間が使用する資源の量を減らすために何ができるのか。この背反する命題を達成するためには「必要な時に(When)、必要なものを(What)、必要な分だけ(How much)、必要な場所・人に(Where/Who)」提供すること(最適化)が重要だと言えます。

このためには「いつ(When)、何が(What)、どれだけ(How much)、どこに・誰に(When/Who)」必要なのかという情報を把握して、一番効率的でムダのない計画を立て、実行する必要があります。また、状況や状態、人々の好み、使われ方の変化にあわせて、消費量も常に変動するため、いったんたてた計画も継続的に見直していくことが重要でしょう。そうすることで、ムダ(生産量・消費量)を最小限にしつつ、充足度・満足度(QoL)を最大限に保つことができます。

変化への継続的な対応は、常に最新の情報や状態をデジタルの形式でインターネット(Connected)を介してすぐに(伝わる速度)取得することから始まります。この時に収集する情報は機械やセンサーからの数値情報、カメラなどからの画像・動画、スマホ経由の情報など(伝播性)もあることでしょう。紙などのアナログ媒体では迅速かつ効率的に情報を収集することも処理することもできません。

収集した情報やデータは処理・加工を行い、情報の把握と今後「いつ(When)、何が(What)、どれだけ(How much)、どこに・誰に(When/Who)」必要かという計画(予想)を立てるのに使われます。この時、フィジカルな世界をバーチャル世界で再現したバーチャル空間(加工性・複製性)を使うことで人手ではできない数のアイデアやパターンの検証(限りない検証性)を行うことができます。一人ひとりの人間や企業などの単位で計画を立てる訳ですがその時には人工知能をベースとする仕組みを使うことにより、一人ひとりのニーズに的確に応えること(Contextual)が可能となります。

その後、立てられた計画(予想)を元に実行をしていきます。このサイクルを繰り返していくことにより、より個々の好みや傾向、状況変動による変化などをより正確に把握してニーズにより的確にかつ継続的に対応していくこと(Continuous)ができます。

また、この4つのCsの考え方を製品・サービスのライフサイクル全体、さらには社会全体で回していくこと(Circular)により全体としてムダを最小限に抑えながら、利用者・最終消費者の充足度・満足度を最大化していく最適化社会を実現していくことができます。

「デジタル・バーチャルx4Cs=最適化社会」の考え方を食料問題に適用していくのはもちろん容易ではありません。そもそも食料消費や食品ロスに関する意識や行動を考えていくなど、仕組み以外で問題を解決するアプローチと組み合わせることが必須です。その上で、この食料問題(SDG12)をデジタル・バーチャルx4Csで解決することができれば、関連する飢餓問題(SDG2)や食料生産に関わる水問題(SDG6)なども(部分的とは言え)同時に解決できる可能性を秘めています。そういった意味では世の中(地球や経済など)とそれを構成する要素がどう連動した仕組み(システム)として動いているのかをきちんと把握して、影響対象・影響度合いを見極めながら最適化を行っていく必要があります。

この最適化社会を実現するためにはテクノロジーは不可欠な要素です。当社の理念・ビジョンはまさにこの最適化社会を念頭に置いたものになっており、次回は当社の理念・ビジョンについて、次回に理念・ビジョンを実現するテクノロジー概要について紹介する予定です。


(参考・備考)

*1:もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html

*2:Global Demand for Food Is Rising. Can We Meet It?
https://hbr.org/2016/04/global-demand-for-food-is-rising-can-we-meet-it

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