ダッソー・システムズでサプライチェーン・生産技術・生産管理・製造実行領域(DELMIA製品)でコンサルタントをしている立田です。
このシリーズでは持続可能な世界創り(SDGs)を見据えた社会の変化やそれを支える当社の理念経営、ビジョン、テクノロジー、サービスなどについてできるだけ分かりやすく語っていきます。
今回は当社のテクノロジーを使った改革事例を3つ紹介します。いずれも第二回で紹介した「デジタル・バーチャルx4Cs」や第三回の「3DEXPERIENCEユニバース(3DEXPERIENCE universes)」の実現に必要な要素(モデリング、システムズエンジニアリング、シミュレーション・最適化)」の観点をかけ合わせて読み解いていきます。
1つ目は「バーチャル・シンガポール」です。
バーチャル・シンガポールはシンガポール国立研究財団(NRF)とダッソー・システムズの共同開発プロジェクトで、シンガポールという都市全体のバーチャルツインを構築し、環境保護やインフラ、防災、コミュニティサービスなどの計画や運営を支援していくというものです。
バーチャル・シンガポールでは、建物や道路、公園、緑地、河川といった規模や形状、性質の異なる(マルチスケール、マルチドメイン)オブジェクトを、3Dのデジタルモデル化しているだけでなく、空気の流れや騒音のレベルといった異なる物理現象(マルチフィジクス)や時間帯によって変わる日差しの強さ・向きなどもモデル化しシミュレーションすることが可能です。
このバーチャルツインは仮想世界の中で完結するものではありません。ここにリアルの世界から得られた気温や湿度、圧力、騒音などのデータをを反映させ(Connected)、また、スマートフォンやセンサーから得られた人の動きを重ねて確認することも可能です。関係省庁や市民、研究者は、自分たちの観点や関心事(Contextual)をもとにこれらのさまざまな情報を取得し組み合わせて活用していくことで、より良い生活や街づくりをしていくことができます。また、市民や研究者から意見を募り活かしていくことで継続的(Continuous)に協創していくことができます。
なお2015年の国連サミットでシンガポールは「プロジェクトの一つであるバーチャル・シンガポールではシンガポールを建物や陸地、自然環境などの3Dデータで表現しています。市民や民間企業、政府省庁、学術機関が協力して気候変化や環境被害などの問題に取り組んでいくことができます。」(One project, called Virtual Singapore, offers a 3D map of Singapore enriched with layers of data about buildings, land and the environment. Citizens, industry, government and academia can partner together to monitor and tackle climate change and environmental damage.)と発言されるなど、バーチャル・シンガポールとSDGsとの関連性が明言されています。
2つ目はミーレ(Miele)社です。ミーレ社はドイツの高級家電メーカーです。
ミーレ社は近年、IoT家電製品のラインナップを発表し、使い手に対してより快適な生活・体験を提供しています。例えば、コンロに電源を入れるとレンジフードの照明が自動的に点灯します。また、コンロの燃焼状況に応じて換気扇の速度も自動的に調整するなどスマートなキッチンを実現します。
ミーレ社ではこのスマートキッチンを実現するために製品単体をデジタル環境で設計(モデリング)するだけではなく、家電同士の連動した動作もシステマチックに検証(システムズエンジニアリング、シミュレーション)しています。
またインターネット経由で家電の利用状況を収集する機能(Connected)を付けることで、顧客の行動を把握して、状況に合わせた(Contextual)より良いサービス、より良い体験を継続的(Continuous)に創り出しています。
3つ目はCadMakers社です。CadMakers社はカナダのBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)およびバーチャル・デザイン・コンストラクションの会社です。
CadMakers社革新的な建築デザインはもちろん、施工まで考慮したサービスを提供しています。ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の学生寮の設計では、プレファブ工法を利用することにより、従来の工法と比較して工事期間を約70%短縮し、コストも削減しました。
CadMakers社では建物本体や建材、建物の周辺をバーチャル空間上でモデリング(マルチスケール、マルチフィジクス)するだけでなく、建材が関係業者のどの段階にあるかをプラットフォーム上で把握して、工期管理やコスト管理に生かしています。
また、施工性検討や施工時の手戻り削減のためにVRを活用した施工検討も行っています。
今回は当社のテクノロジーを通じて改革を実現された、もしくはされようとしている事例を紹介しました。次回は話をSDGsに戻して当社の活動を紹介します。