設計 シミュレーション はいわば、仮想試作と仮想実験の世界をつくることです。そして、ほとんどの企業の開発目標には、試作削減、一発試作、試作レスと言った言葉が並びます。コストを下げ、開発期間を短くし、試作品の品質を上げるのに、”会社として”効果があるからです。
一方では、個々の設計者やエンジニアにとっては、直接モノに触れ、試す機会が減ることでもあります。経験不足という意味で個人の技術品質が下がっていくという矛盾を生じさせているわけです。お客様の声として、”最近の設計者はモノを知らない”、”解析結果を鵜呑みにしてしまう”等々よく聞く話ですね。会社としてはバーチャル化を進める一方で、設計者や解析担当者にはモノに触れることを求めるという厄介な状況を、うまいこと解決する方策はないものでしょうか。
そのことを語る前に、シミュレーション 技術がどのように活用されていくべきかを、ライフサイクル的に眺めて見ましょう。これからのことも含めた数十年のライフサイクルを考える必要があるでしょう。 •開発期 ものと体験しながら、シミュレーション 技術を構築する時代 試作・実験が主で シミュレーション は補佐的 •発展期 ものとの体験が減り、 シミュレーション 技術を活用する時代 シミュレーション が主で、実験試作で検証 •高度期 シミュレーション 技術でものを体験する時代 リアルとバーチャルの垣根が無くなる世界 シミュレーション を適用するには必ず、「開発期」を通過する必要があります。
この期間は、シミュレーション精度を高め、試作・実験から置き換えるようになるための基盤技術を開発する時期ですから、モノにも十分触れながら、たくさんの失敗を経験し、シミュレーション を理解することも求められます。今日実用化されている、多くのシミュレーション技術を立ち上げてきたのは、この時期で仕事をされてきたシニア世代の方々です。リアルの重要性とバーチャルの価値の両方をバランスよく経験するという、今日の状況からみると実に恵まれた時代だったのではないか、実に羨ましく思います。
「開発期」を体験してきた方々から見ると、「発展期」はその成果であるとともに、モノを知らない世代が増えてきていると映るのも当然のことかと思うのです。そういった矛盾を抱えているという意味では、「発展期」は、来るべき「高度期」に向けた過度期にあるという見方もできるでしょう。ですので、来るべき「高度期」のあるべき姿を想定してその方向を目指すことが重要なのです。 次回は、「高度期」について語ってみたいと思います。 –つづく–
【SIMULIA 工藤】
<バックナンバー> 【デザインとシミュレーションを語る】第一回:イントロダクション 【デザインとシミュレーションを語る】第二回:シミュレーションの分類 【デザインとシミュレーションを語る】第三回:シミュレーションは実験と比べて何がいい? 【デザインとシミュレーションを語る】第四回:シミュレーションは緻密な統合技術 【デザインとシミュレーションを語る】第五回:リアルとバーチャルの垣根をなくせたら?(1) 【デザインとシミュレーションを語る】第六回:リアルとバーチャルの垣根をなくせたら?(2) 【デザインとシミュレーションを語る】第七回:3D-CADは何のため?