【シミュレーションを基盤とした設計フロント・ローディング手法の体系化とその実現】
ほぼ半年の長いブランクになってしまい、たいへん申し訳ありませんでした。以前は思いついたら、メモを取っておいて会社の仕事が終わったあとや週末の自宅で、電車のなかでもバリバリ文章を書いていたのですが、歳の故やはり根気が続かなくなったせいでしょうか、長い文章を書き続けることがきつくなってきたようです。とはいえ、10章まで書くことを目的にしておりますので、あと4章も書かねばなりません。気を引き締めて再開しようと思います。
次回から第7章「計算品質標準化から知識化へ」を始まる予定なのですが、そのまえに最近、といってももう数か月前ですけれど、スマート・プロセス学会の学会誌Vol. 7, No. 2(2018年5月発行)の「システム的アプローチによる新展開」という特集に寄稿した解説記事を紹介いたします。
論点を下記に記します。
- 手戻りが発生する原因には、設計が複雑になってきたことで、従来の経験ベースによる設計では対応できない複雑な性能間のトレードオフや、データ共有やコミュニケーションに関する不備、経験の少ないエンジニアの増加など様々な要因。
- 既存製品を従来のやり方の延長線上で開発し続けて生き残ることは甚だ困難。これに対応するための指針、考え方、方法論を真剣に考え、体系化し、継続的に実践することは、製造業の最重要テーマ。
- 設計フロント・ローディングの考え方は、その重要性とともに長らく認識されてきたが、この10年来技術が格段に成熟し精度が十分に確保される領域が増えてきたこと、さらにこの5年来では、合理的なコストで高速なコンピュータを利用できるようになったことから、シミュレーションを設計の早期段階で必要十分な回数計算することが容易になった。
- 開発の早期段階からバーチャル設計(シミュレーション)を駆使することで、手戻りの発生しない素性の良い設計を実現するというコンセプトをModel based Design (MBD)手法により実現できるようになってきた。
- Dassault Systemesの3DEXPERIENCE platformにより、UAV(Unmanned Air Vehicle、通称ドローン)を90日で試作するというプロジェクトで実現した事例を紹介し、技術的には実証されていることを説明。
- 一方、企業の実業務に適用していくためには、技術以外のいくつかの課題を解決する必要があることを指摘。
① 会社の長期的ビジョンへの直結と体制
② シミュレーション活用への理解
③ 複合的視点を持つエンジニアの育成
④ MBDを推進するエンジニアの育成
⑤ 対外的情報収集能力
- 設計開発の役割も、製品の機能や性能に関する開発だけではなく、利用者の経験を想定した要求やEnd of lifeに至るまでの利用状況を加味した斬新な設計開発手法が求められる。フロント・ローディング化はそのための手段に過ぎない。
- 開発体制も大量のコンピュータによるルーチンワークの自動化と少数精鋭の改革・発想エンジニアリング業務という分業体制が実現していくであろう。将来の変化を自ら創出してリーダーとなるか、フォロワーとなるかの違いは、この先、劇的な差になって表れてくる。
以上取り急ぎの要約でした。8ページという少々長い論文になりますが、皆様のご参考になれば幸いです。
【DASSAULT SYSTEMES 工藤啓治】
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