【箸休めの章 美しさとデザイン】仕事の美しさと最適設計の美しさ
あるとき唐突に、仕事をしている姿は美しいなあ、と強く感じたことがあります。仕事に限らず、何かに集中して一生懸命やっている姿が美しい。一歩家の外を出ると、仕事をしている人たちに囲まれています。接客している姿、作業に没頭している姿、運転している姿、真剣に考えている姿、てきぱきとこなす姿、真剣に読んでいる姿、書いている姿、スポーツをしている姿、すべては何らかの目標を達成するために行っていて、集中する仕事、早い仕事、正確な仕事、丁寧な仕事、人を心地よくする仕事など、仕事にはその特性があってそれを最高に発揮すべく仕事をしているので、常に工夫し向上し、結果として、美しい仕事の姿になっているのだと。
そういう美しい仕事をするという行為は、人間行為の限界の上で行われていると考えると、最適設計の解集合限界線(トレードオフカーブ)に相当するのではないかと思ってしまいました。その反対に、手抜きをした仕事は、すぐに分かってしまう。改良する余地があり、中途半端なので、最適解線の上には乗ってないので、美しくない、すぐに手抜きをしたとわかってしまいます。
家に帰るとくつろいでいる状態は、緊張の糸が途切れているので、最適解集合には乗らない状態。さらに、くつろぎを超えて、他人には見せられない状態でだらけてしまっていると、これはもう最適解集合のはるか後にいる状態ともいえるでしょう。家族は、家でお父さんのだらしない姿しか見ていませんから、仕事での“美しい姿”なんか想像できないですよね。
よくモードチェンジといいます。家を出てすぐには仕事モードにならなくて、ある程度電車に揺られて会社や訪問先に近くなると、仕事モードになるということがよくあります。(最近は、パソコンと電話で、家にいてもモードがぐちゃぐちゃな場合多いですけれど、それは置いておいて。)人は、最適解上にある仕事モードと、プライベートな通常モードとを意識的にスイッチして切り替えています。
モノの設計との類似で言えば、性能を限界まで追求した設計はやはり機能美の究極であろうと思います。そこには、人間の明確な意図があり、曲線1本、部品や材料の選択と組み合わせすべてに設計上の意味があり、製品全体としての完成された一つの姿であることを思えば、美しくないはずがないのです。人間がその意図を徹底追及し、改善し、実施する行為は、自らの行為であれば仕事の美しさ、その結果であれば製品・作品やサービスの美しさにつながるのは当然のように思えますね。
【SIMULIA 工藤】
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