第5章 不確定性を掌に置く 【設計とは不確定性の克服】
これまでのブログ記事で、「設計とは最適化」、「設計とは逆問題」と述べてきました。今回は新たに、「設計とは不確定性の克服」という側面で述べてみたいと思います。実は下記の視点で設計をみていることに築くと、
- 「設計とは最適化」とは、究極の目的を示している
- 「設計とは逆問題」とは、方法論を示している
- 「設計とは不確定性の克服」とは、解決したい課題の特徴を示している
以上をまとめると、「設計とは、不確定性を克服しながら、最適化をめざし、逆問題を解く行為である。」というような表現になるでしょうか。こういう定義をしたから何がどうだということはないのですが、シンプルに本質を表現することは、ブレずにものごとを進めていくのには大切なことではあります。
さて、どんな不確定性と格闘することになるかといいますと、“不確かさは、モノづくりのあらゆるところに顕在/内在する“ので、下記のように整理してみましょう。
1) 製品:仕様、CAD、モデル、結果、実験
製品に関する上記の不確かさに対応するには、BOM,情報未着/未定、公差解析、モデル精度、結果精度、誤差評価などを考慮することが必要になります。
2) 人間:操作、手順、経験、スキル、判断
人間の行為が実は一番信用できず、対策が難しいかもしれません。上記の不確かさに対応するには、ルール化、標準化、自動化が武器となります。
3) 自然:環境、材料、荷重、劣化
自然も時間空間的にバラツキ・ゆらぎだらけですので、しっかりした対策が求められます。従来より、信頼性設計、ロバスト設計といった手法が用いられてきました。
4) シナリオ:要求、使われ方、条件
想定外のシナリオで作成された製品はその性能が発揮されなかったり、早く壊れたりします。設計早期での要求管理、仕様不確定性評価といった対策が重要になります。
5) 組織:日程、管理方法、タイミング、意思決定
大きな集団になるほと情報と仕事のコントルールが難しくなります。プロジェクト管理やダッシュボードが有効な方法になります。
これまで登場した様々な不確かさを、広い意味で定義してみますと、
- 初期状況:未知・未定・未着・不明・無知・誤り・想定外・重複した情報と事象
- 理想状況:既知・決定・既着・明確・把握・正確・想定内・一元化情報と事象
上記の初期状況から、理想状況になるように、設計という組織行為を管理・コントロールすることの大切であること、そのための手法やシステムが不可欠であることがお分かりいただけるでしょう。
【SIMULIA 工藤】