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産業機械November 25, 2020

【バーチャルでひも解く世界】1: CLASSトラクター、新工場での新製品開発をバーチャルで「一発合格」させたスゴ技とは

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Avatar 小林 敦志 (Atsushi Kobayashi)

ダッソー・システムズで産業機械業界のコンサルタントをしております小林敦志です。世界140か国、2万人が働いている当社では、多岐にわたるプロジェクトが動いています。このコラムでは、主に海外のプロジェクトや日々のニュース、発見から、当社ならではの情報を私のセレクションで「蔵出し」しながら、大きく変化する社会、製造、ITの姿のスナップを皆様と共有していきたいと思っています。

さて、ダッソー・システムズのサイトで、パースペクティブというのがあるのをご存じでしょうか?その中から1つご紹介したいと思います。

以下 10月23日付のAlyssa Rossのブログ記事、「Manufacturing tractors right the first time」の超訳です。

________

CLAASトラクターのような機械メーカーが新製品を開発する際、新技術の影響は、利用するお客様への効果や影響だけでなく、自社の生産ラインにどう影響するかを考える必要があります。

フランスのル・マンにあるCLAASトラクターの工場で製造されるCLAAS AXION 900 TERRA TRACは革新的な製品です。標準的なトラクターホイールとクローラトラックを後部に組合せることで、トラクションによる運転のしやすさと土壌保護を向上させるという独特の設計です。一方、CLAASトラクター社の刷新された工場で最初に開発・製造される製品でもあり、製品開発業務全体に3DEXPERIENCEプラットフォームをご利用いただきました。

これは、個別の改善結果が、単なる合算でなく、相乗的に効果を得られたということを示しています。CLAASトラクター社は戦略的に、AXION 900 TERRA TRACと、それを生産する工場の両方を一度にモデル化し、近未来の組立ラインでの新型トラクターの生産業務を予測しました。CLAAS社は、3DEXPERIENCEプラットフォーム上で両方を同時に行い、物理的な試作車を作らずに、トラクターを最初から正確に組立てることができています。 「未来の工場は、まだ想像もしていない将来の製品と統合しなければなりません」と、CLAASトラクターの生産技術ディレクターのブラソー氏は述べています。

「当社の組立ラインでキャタピラ型のトラックを開発したのは初めてでした。プラットフォーム上で 3D 表示を行うことで、今まで標準的な四輪トラクター用に設定されていた製造プロセスが、キャタピラ型トラックを増備する新型トラクター・モデルにどう適応できるかを確認できました」

3DEXPERIENCEプラットフォームが提供する多くの新機能を使い、新設計のシミュレーションや設計のバリエーションを簡単に扱え、開発プロセスの早い段階で生産可能性を確認して組立ラインを最適化でました。

効果が非常に高かったため、CLAASトラクターの親会社CLAASグループでも、現在グローバルの他の組織や工場にプラットフォームを横展開することを検討しています。

CLAASトラクターの工場の刷新や、3DEXPERIENCEプラットフォームで、どう生産業務を変革するかは、ビデオやケーススタディを参照ください。

_______(以上、超訳終わり)

こちらの事例、斜め読みすると、あんまりピンと来ないのですが、よく考えるとすごいと思っています。英語では、「Manufacturing tractors right the first time」なのですが、超訳すると「トラクター製造を一発合格」となります。YouTubeのビデオ「CLAAS AXION 900 TERRA TRAC. Trailer.」をみると、本当に前と後ろが合体した構造しており、道路の畑も爆走しています。そこへ元々四輪のトラクターしか生産できないラインへ、工場のラインの改訂とセットで、新製品を投入するという判断は相当自信があったのかと思います。

参照していただくには、CLASSトラクター お客様事例にあるユーザー・ビデオ 「The power of digital continuity」がお勧めです。

おそらくたくさん発生した生産準備での設計変更の一例を紹介していると思うのですが、新発想の新製品でも、実際に組み立てるにはクレーン、リフトが必要とのこと。タイヤ方式であれば、後付けですし、まだ大きな設備が不要であったことは想像できます。それが、キャタピラが後段についたことで、人力や既存の設備では対応できない、というのも想像できます。ビデオでは簡単に触れていますが、クレーンの手配、設置場所検討、据付、作業性検討には、設備が大型なだけに、かなりの時間を要したと思います。日本だと新製品の出図後、数ヶ月はかかっているのではないでしょうか?

ビデオでは触れられていませんが、CLAASトラクター社のYouTube 「AXION 900. Product film. / 2017 / en」を見ると、牽引する器具の種類も多様で、農家が選ぶオプションも多様で、即座に工場での組立に影響しているはずです。そんななかでも、一発合格というのは素晴らしい成果だと思います。

一言で言うと、デジタルで、となりますが、CAD図面も、工場の図面も、製造設備の図面も、紙のものは一切なく、シミュレーションできるようにモデル化され、不整合や先祖返りがない状態でなければ実現できないでしょう。もちろん道具だけでなく、関係者全員がツールに慣れていなければ実現できず、一発合格できる段階までの習熟には年単位の時間がかかったかと思います。

翻って、日本ではどうでしょうか?CADを清書ツールのように使っている企業も多いですし、特に設計部門と生産準備部門では、図面、ファイルの管理先、保存先が別々というのがほとんどだと思います。(経産省2020年版「ものづくり白書」 )

でも、「3D(3次元)データ」の活用が進んでいない日本の実態が明らかになっています。一段と、彼我の差を大きく感じていますが、逆に考えると日本の製造業にはまだまだ伸びしろがあるということではないでしょうか。

次回は、レオナルド・ダ・ヴィンチの写本にまつわるプロジェクトをご紹介する予定です。産業機械業界コンサルタントの小林でした。

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