消費財業界の企業は、現地の嗜好に合わせて自社製品を多様化して、ますます新たな市場に手を広げようとしています。しかし、製品だけでは成功するとは限りません。パッケージもまた、その市場に合ったものにしなければならないのです。成功を収めている企業は、コラボレーションを可能にするプラットフォームの力を活用することで、現地規制への対応という複雑な作業を管理し、パッケージを素早く現地文化に適合させています。
スイスを拠点とする消費財企業のネスレは、自社の菓子製品「キットカット」でアジアに参入することを決断し、驚くような成功を収めました。
「2017年に日本での売り上げが50%増加しました」と、ネスレ日本でコンフェクショナリー事業本部のマーケティング部長を務める竹内雄二氏は述べます。「キットカットは今や1日に400万個を売り上げる日本一のチョコレート・ブランドで す。これは日本市場特有の嗜好に合わせて30種類以上のキットカットを発売したことで達成できました。みそ、わさび、抹茶、紅いも、りんごなどのフレーバーがあります」
ネスレのような成功を目の当たりにすると、成長を目指すブランドにとって新しい市場が魅力的な理由がよくわかります。
アクセンチュア・ストラテジーの2018年の調査レポート「Live the Growth Dream in Asia」によると、アジアの新興市場だ
けでも新規支出が4兆ドル(3.53兆ユーロ)にのぼり、製品を初めて購入する消費者が4億人いるとされています。
世界の新興市場に目を向けると、その魅力はさらに大きくなります。PwCによる2017年のレポート「Consumer Packaged
Goods Trends」で指摘されているとおり、中南米、中東、その他の新興市場は先進国市場よりもはるかに大きな成長力を
持っています。
確実なチャンスがあるにもかかわらず、こうした新興市場での成功は決して簡単なことではなく、ブランドは特にパッケー
ジという分野を見落としがちです。
「新たな市場へ既存製品を投入することが、長い間、成長への道とされてきましたが、課題がないわけではありません」と
、ブランドとマーケティングを専門とする英国のコンサルティング会社Prophetのパートナー、Felicia Rosenzweig氏は述
べます。「企業は通常、生産や流通に関する問題に対しては事前に準備しますが、パッケージにも同様に複雑な問題があり
ます。消費財企業は、現地の材料と言語を使用してパッケージを作り変える際に、どの構成要素がどのように規制されてい
るかを評価しなければなりません」
規制に関する課題を克服
イタリアの食品メーカー、バリラで南北アメリカ地域を担当する品質・食品安全の責任者Jeffrey Vaca氏は、パッケージの
課題をわかりすぎるほどよくわかっています。その大半は各市場によって異なる規制要件を満たすことに関する課題です。
「私たちが直面する最大の課題の1つは、すべての製品とそのパッケージやラベルが、各現地市場の規制要件を確実に満た
すようにすることです」と、同氏は述べます。「バリラは100カ国以上で販売されています。これらの国々で販売される全
製品に、現地の規制基準を満たすラベルを貼り付けなければなりません。これは多くの場合、同じ製品に複数のローカライ
ズされたパッケージを用意しなければならないということです」
同じように、アルゼンチンの製菓会社、Arcorの人気チョコレート菓子ボノボンは60カ国以上で販売されていますが、現地
市場の多様な規制要件に合わせてパッケージを変えています。たとえば、チリの規制では脂肪分や糖分が多く含まれること
を強調する警告をパッケージに記載しなければなりません。隣のアルゼンチンでは、ラベルは問題がありませんが、商品名
が問題になります。ボノボンは、そこでは『公正な分け前』という意味の‘Tu Porción Justa’という商品名で販売されていま
す。
「先駆的企業では、コンカレント・デザインを可能にするデジタル・プラットフォームを使用しています」AGUSTÍN ACUÑA氏
TECKDES アカウント・マネージャー
さまざまな一連の規制要件を満たすのは難しいことですが、複数のパッケージのバージョンを管理することも別の意味で複
雑な作業です。TECKDESはアルゼンチンを拠点とし、消費財のパッケージのデザインと開発を手がける企業です。同社で
アカウント・マネージャーを務めるAgustín Acuña氏は、多くの企業が、人為的ミスが起こりやすいプロセスを自動化せず
に、一つの市場で販売する時と同じ方法でパッケージのアートワークや文字を管理し続けていると指摘します。ワード文書
やスプレッドシートという形態で、複数のネットワーク・ドライブや個人のコンピュータに保存しているというのです。
「こうした文書は、消費財企業の広報、法務、製造部門、ならびに外部代行企業のいたるところで何度も複製されることが
よくあります」と、Agustín Acuña氏は語ります。「しかし、最大の懸念は他にあります。アートワークの確認もせずにフ
ァイルを管理していることが多いのです。その理由は、サプライチェーンの多くの関係者がファイルを閲覧するために必要
なソフトウェアを持っていないからです。いざ、新しいアートワークを作成する段階になって、コピーやグラフィックのど
のバージョンが正しいのかわからない、それどころか現在市場に出ているものが100%正確かどうかもわからないことがあ
るのです」
Rosenzweig氏は、このような状況に陥ると大きなミスが生じるといいます。「ミスが発生すると、製品発売の遅れから全
製品の回収、新たなパッケージにかかる高額なコストに至るまで、さまざまな結果を招くことになりかねません。それが広
報部門を悩ますことになるのは言うまでもありません」
成功につなげる戦略
この課題を克服するために、企業はスプレッドシートの使用を撤廃してサイロを壊し、すべての関係者に協業してもらう必
要があります。部門の境界をまたぎ、デザイン事務所や市場調査会社などのエコシステムの外部メンバーを統合するクラウ
ドベースのプラットフォームは、オンライン・サービスを通して、素早く、コストをかけずに実装できます。
「先駆的企業では、コンカレント・デザインを可能にするデジタル・プラットフォームを使用しています」と、Acuña氏は
述べます。「コラボレーションが可能なクラウドベースのソリューションは、組織とサプライヤーをまたぐプロセスを一
元管理することで、コピー管理とアートワーク作成を統合し、新しいパッケージのデザインを迅速に作成できるようにしま
す。こうしたソリューションには、コピー作成、翻訳管理、アートワークのテンプレート作成、デザイン事務所・企業・印
刷会社間の承認フローも含まれます。サプライチェーンのすべての関係者が変更やコメントの最新バージョンを確認するこ
とができ、前のバージョンを使用してしまうことはまったくないのです」
プラットフォームでは、製品を出荷する各地域に対して統合的な規制管理も行います。「パッケージや材料の適合性を常に
評価し、違反の可能性があればリアルタイムに警告を発します」と Acuña氏。市場投入のスピードと規制遵守が成功に不
可欠となる業界では、デジタル・プラットフォームが勝敗の分かれ目となるといってもいいでしょう。
「アートワークを一つひとつ最初から作成する必要はなく、数分で新しい地域に合わせたパッケージを作成することができ
ます。通常の方法では数日、場合によっては数週間かかる作業です」と、Acuña氏は述べます。「さらには、プラットフォ ームでアートワークの作成・校正ツールを統合することで、パッケージの不具合の大半を取り除くことができます。この業 界では、パッケージの不具合に起因する製品回収が発生することが最も多く、それには多額の費用がかかるのです」
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