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建築・建設November 3, 2017

建築・建設業界 BIMレベル3が可能にする エンドツーエンド・コラボレーション 製造業のベストプラクティスに基づく建築・建設業界の取り組み~第二回

製造業では何十年も前から工業化技術が一般的に使われています。今や建築・建設業界でも、持続可能性の向上、管理運営の最適化、コストの削減、安全性の向上を目的に、プランニング、設計、施工、据え付けの改善に役立てるために、工業化手法を活用した建設方式を利用する動きが広がっています。
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設計・施工業の成熟 BIMレベルとコラボレーション・メソッド

建築・建設業界の企業は、工期の短縮、無駄の削減、品質の向上、環境規制への遵守を実現するために、重圧にさらされています。こうした状況下で、業界のあり方に変革が求められています。

建築生産の工業化

従来の建設プロセスでプロジェクトを進めた場合、しばしば予算の超過やスケジュールの遅れが発生します。「工業化による建設方式」では、建設現場から離れた場所で構造部材を組み立てられるように、さらに高度なプランニングとデータ駆動型のシミュレーションを採用しています。それによって、建設プロセスにおいて幾度となく行われる複雑な情報交換から、最終的な据え付けの段階で不一致が発生する可能性を軽減します。この建設のデリバリープロセスの変化によって、より優れた品質管理、管理運営の最適化、人件費の節約、安全性の向上が実現します。 工業化技術は、何十年にもわたって製造業で一般化されていますが、このコンセプトを設計・施工業に応用すれば、画期的な効果が期待できます。

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)

BIMは、設計・施工業において、建設プロセスのデータの流れを改善する解決策で、それによって効率を高めることができます。建設作業の工業化は、建設会社、ファブリケーター、管理運営会社によって設計情報が下流工程に適用できるよう適切に構造化されている時に、効力を発揮します。 BIMデータの標準規格は、この目的に適合するレベルに向けて、徐々に成熟度を高めています。

図1:最新BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)成熟度モデル CADからBLMに至るまで

施主や管理運営会社は、コストの削減、サプライヤーからの価値の増大、持続可能性の向上につながるプロセスの改善や技術革新を強く求めることで、より高いBIM成熟度レベルの達成を目指して業界を後押ししています。 英国政府が2016年までにBIMを導入するよう指示したことも後押しとなり、現在では業界の大部分の企業が、BIMレベル1からレベル2へと移行しつつあります。BIMレベル2のプロセスと従来のワークフロー、および部分的なソリューションで効率性を見いだそうと努力している企業もありますが、革新的な企業は、競争力を高めるために、コラボレーションのあり方を見直して、統合されたBIMレベル3テクノロジーを活用しています。 BIMレベル3のプロセスの導入に成功した施工チームは、無駄の削減、工期の短縮、大きな利益幅を維持しながら、さらに良い成果を生み出すという戦略的優位性を得ています。

BIMレベル2 vs レベル3

2013年、英国政府は情報の曖昧さを軽減することを目的とし、2016年までにすべての政府プロジェクトにおいてBIMレベル2の利用を義務付けました。BIMレベル2は建築家に大きな恩恵をもたらしていますが、レベル2のツールは設計コラボレーションの問題に重点を置く傾向があり、建設プロセスにおいては、それほど大きな役割を果たしません。レベル2の部分的なソリューションで作成されたモデルは、最終的にエクスポートされ、繋がりのないシステムにインポートされます。このような受け渡しが、意図せぬ結果を引き起こし、データの孤立化、エラー、バージョン管理の問題、手戻りなどの原因になることがあります。プロジェクトの初期段階に設計チームが作成したデータが、後のプロジェクトの受け渡しを通して継続的に流れていきません。結局、建築家は施工や据え付けの手法を予測して調整する機会を逃し、設計意図を管理することができなくなり、設計変更(RFI)に基づく対応に駆り出されることになってしまいます。 レベル2ではBIMデータを活用するための統合システムがないため、建設会社とサプライヤーは、モデルベースの一貫したコラボレーションに参加できず、手戻りのコストを負担しなければなりません。 BIMレベル3は、データの繋がりを開始から完了まで一貫して結びつける唯一のアプローチで、エンドツーエンドの効率を高めることができます。レベル3のシステムでは、BIMデータがファイルに変換されたり、各関係者に電子メールやFTP経由で提供されたりすることはありません。一元化されたソースが構築されて、クラウド上のデータベースに保管されているため、すべてのプロジェクトメンバーがウェブサービスを通じて利用できます。BIMレベル3では、施工、ファブリケーション、さらには施設管理の目的でデータのトランザクションを行うことができ、オープンなコラボレーションとビルディング・ライフサイクル・マネジメントを実現します。 堅牢なプロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)システムが、複雑な建築・建設データを統合できる効率的な環境を生み出します。PLMシステムにBIMデータを組み込むことで、ビルディング・ライフサイクル・マネジメント(BLM)システムを創り出し、BIMレベル3を可能にします。


BIM + PLM = BLM


現状:BIMレベル2の独立運営されるチーム間での協業モデル

建設プロジェクトのメンバーは 以下のチームに分類することができます。

• 設計チーム:建築家、エンジニア、専門的コンサルタント • サプライチーム:建材メーカー、ファブリケーター、サプライヤー • 施工チーム:ゼネコン、専門工事会社、関連会社、取引業者 • 管理運営チーム:施主、管理運営会社、施設管理者


1 建設手法や方式は、しばしば建築家が法的リスクを負うおそれのある問題を包含していると考えられています。そのため、設計チームは建設会社や設備メーカーと緊密に連携することに慎重になる場合があります。非公開のシステム上で、チーム間のコラボレーションを形式化し、追跡できるようにすれば、法律面の負担はなくなります。 2 IFC(Industry Foundation Classes)データ モデルによって、この相互運用が実現します。

各チーム内にフィードバックループ、タスク管理、設計の調整など、限定的なコラボレーションの要素は確かに存在しますが、チーム間で情報の曖昧性、手戻り、設計変更(RFI)が持続的に発生するのは、長期に及ぶプロジェクトの実行チームの至る所でコラボレーションが機能していないということを示しています。 英国建設産業協議会の調査によると、BIMレベル2を維持するだけでは、コストの削減、価値の増大、持続可能性の向上など、施主が求めるメリットを得ることはできません。受け渡し作業や手戻りがプロセスに付いて回るため、チーム間での統合が妨げられ、独立した組織内に価値が埋もれてしまいます。

図2:従来の設計、施工、管理運営のプロセス BIM レベル2では独立したチームの中で完結

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独立したコラボレーション:断片化したプロセスのデメリット

BIMレベル2のフレームワークを導入した建設プロジェクトでは、プロジェクトデリバリーにおいて予期せぬ問題を発生させる3つの根本原因 – データの統合と文書の連続性が図られておらず、工程予測に必要なデータも不十分という状況に悩まされています。

  データ統合なし 独立したチーム間でのコラボレーションによるアプローチでは、データのエクスポートやファイルのやり取りが必要になります。プロセスの様々な段階で複数の関係者が重要なデータを提供するため、バージョン管理に関わる問題が多発するファイルのやり取りは、ソリューションとして不完全です。 情報の一元管理のメカニズムが欠如しているため、メンバーは、意思決定の向上につながる状況に即した内容の重要なデータを見落としています。建築家は設計意図に基づいて判断するにも関わらず、最終結果に影響を与える施工や製造に関するデータを見落としてしまいます。建設会社には不完全で曖昧な設計情報が伝わり、設計変更(RFI) や変更指示が発生する原因になります。

文書の連続性なし 設計チームは確認申請用の図面を作成します。その後、設備メーカーやファブリケーターは、それぞれの目的に応じて、この図面に変更を加えます。同様に、施工チームはトップダウン方式による見積りに基づき施工図を作成し、RFI、提出物、変更の指示の処理に多大なリソースを費やします。


許可申請用の図面 ≠ 製作図 ≠ 施工図


  プロセスの各段階に必要な図面に差異が生じると、大きな生産性の課題につながります。文書の整合性の問題は、ほとんどが施工工程の中で最終的に解消されますが、そこに至るまでの変更作業には費用と混乱が生じます。  

プロセスシミュレーションなし 簡易的にアニメーション化した3Dモデル(4Dモデル)は、プロジェクトの建設方法を示すモデルとしては不十分です。実際に適切なプロセス情報と統合された設計データがなければ、プロセスベースの手法や方式を説明することはできません。建設プロジェクトで生じる大量の無駄は、ほとんどが施工工程で発生し、材料費と人件費が急激に上昇します。矛盾や最適とは言い難い作業手順が発生するポイントを予測するボトムアップ・シミュレーションがないため、プロジェクトチームは建設作業の仕上がりを経験に基づいて推測しています。BIMレベル2に付いて回る独立したチーム間での協業モデルには限界があり、業界の進歩を妨げています。

効果的なコラボレーションの障壁

業界に変革を起こすのは容易ではありません。協業が慣例化される途上には、数々の障壁が立ちはだかっています。

定義 従来、各チームは個々のニーズに焦点を当て「協業」の意味を定義してきました。 • 設計チームは、協業とは単一のBIMモデルを使って作業することだと考える傾向があり ます。 • サプライチームは、協業とは製作図とサプライヤーが作成する書類をレビューすることだと考える傾向があります。 • 施工チームは、協業とは構造化されたプロジェクト管理システムを使うことだと考える傾向があります。

法的関連事項 契約関係や当事者間の相互関係に、補償問題が発生することがあります。関係者が最新 のコラボレーション・テクノロジーになじみが薄いと、場合によっては、補償に関する異議申し立てや法的な懸念が生じます。信頼できるガバナンスと追跡可能なワークフローよって、説明責任を可能にし、法的リスクを軽減することができます。

部分的なソリューション 標準的な業界ツールはチーム内のコラボレーションの促進には役立ちますが、残念なことにチーム間のコラボレーションには効果的ではありません。単独システムが寄り集まった状態でエンドツーエンドのコラボレーションを実現するのは難しく、バージョン管理の問題や人為的ミスの原因となります。 部分的なソリューションを提供している企業は、BIMレベル2のツールをコラボレーションに適したツールと位置づけていますが、実際にはアプリケーションスイートを使用していないプロジェクトメンバーに対して、限定的にコラボレーションをサポートするツールを提供しています。 逸脱したコラボレーションの定義、法的関連事項の可能性、不適切な部分的ソリューション – こういった課題によって、チーム間の連携が難しくなり、さらにチームごとの独立が進み、非常に非効率な作業の原因になっています

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