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航空宇宙・防衛September 9, 2020

自律型ソーラードローンを効率的に開発: XSunの事例【COMPASSマガジン】

3DEXPERIENCE LabのメンバーであるXSun社は、ゼロエミッションで長距離を自律飛行できるソーラードローンを開発しています。
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Avatar ダッソー・システムズ株式会社

XSunの創業者であるBenjamin David氏は、衛星を設計していた経験をもとに、宇宙技術をドローン開発に応用し、環境保護や保安のために低コストでゼロエミッションのドローンで長距離の目視調査を行うという挑戦に臨んでいます。


Benjamin David氏にとっての理想の1日は、人間の英知が生み出した最先端のイノベーションを駆使し、自らが愛してやまない自然(風、水、太陽、空)の力で走る流線型のレース用ヨットに乗って海上をトップスピードで航行することです。

Benjamin David氏 (画像 © Jeremy Levin)

熱心なウォータースポーツ愛好家であるDavid氏は昔、ポリテク・ナントで航空宇宙工学を学んでいた頃、フランスの風光明媚な大西洋沿岸地域に位置する、ロワール=アトランティック県のゲランド沖の海域でよくウインドサーフィンに興じていました。「ウォータースポーツは最高に楽しいものですが、とりわけセーリングが好きです。その理由は、船体が技術の集結であり、航行に再生可能エネルギーを利用するからです」とDavid氏は述べます。


飛行も同様にDavid氏の想像力を掻き立てます。セーリングのヨットと同様に自然の力で航行する航空機を作るという彼の夢は、ゲランドで実現しつつあります。欧州宇宙機関(ESA)とエアバス社に勤務し、イギリスとドイツで衛星技術の研究に取り組んだ後、David氏はゲランドに戻って長年の夢だったスタートアップ企業を立ち上げました。XSun(Xはテクノロジー、Sunは太陽光発電を表す)と名付けられた彼の会社では、調査、研究、環境保護用途を目的とした広域ソーラードローンの製作、テスト、機能実証を専門に行っています。

XSunのドローンは珍しいタンデム翼機の形状を採用しているためソーラーパネルを多く搭載できます。最近行われたテストでは12時間で600kmの炭素排出ゼロ飛行に成功しました。(画像© Jeremy Levin)  

David氏は次のように述べます。「航空学とセーリングの接点は明白です。現在最も性能の良いヨットは単胴船も含め、ダガーボードと呼ばれる水中翼を用いて水面から浮いて滑走します。航空宇宙技術を直接取り入れた制御システムを搭載しており、徐々に航空機に近づきつつあります。水上を飛ぶように走るこれらのヨットは、再生可能エネルギーである風力を利用します。XSunでは、同じく再生可能エネルギーである太陽光を利用してドローンを飛ばします。エネルギーを集約した技術に面白さを感じています」

環境保護と安全性を目指す

ゲランドは住む場所として素晴らしいだけでなく、ソーラー飛行を専門とするハイテク・スタートアップを立ち上げるのに最適な環境でもあります。開かれた海岸線があり、ウォータースポーツが盛んなこの地には、広域ドローンのテストに最適な障害物の少ない環境がある他、造船所や地域にとって重要なエアバス社の工場の周りに、航空宇宙と分野の豊かな伝統を紡ぐ工科大学やイノベーションセンターが集まっています。

XSunの創業者、David氏が、フランスの風光明媚な大西洋沿岸に位置するロワール=アトランティック県のゲランドをXSunの拠点に選んだのは、航空宇宙、ヨット、複合材分野に強いゲランドの地の利を生かす狙いがありました。(画像  © Jeremy Levin)

衛星やヘリコプター、飛行機と異なり、ドローンは比較的低コストで製造、運用ができます。XSunの遠隔操縦可能なソーラードローンはそれに加え、従来のドローンより航続距離が長く、自律機能と持続可能性にも優れており、他の航空機のようにCO2を排出することがありません。

David氏がゲランドに戻ってXSunを立ち上げたのは、欧州宇宙機関で測位衛星システム、ガリレオの開発に取り組んで以来、温めてきた構想を実現するためです。ガリレオは太陽エネルギーを動力源とし、地上から遠隔操作されます。XSunのドローンも同様の仕組みです。「衛星コンステレーションと全く同じ仕組みです」と同氏は述べます。

XSunがドローンの用途として想定している長い飛行距離での作業には、石油やガスのパイプラインに修理を要する小さな漏れがないか調べる調査、線路に障害物やダメージがないか見つけ出す調査などが挙げられます。

「XSunのドローンは人間の代わりになり、地球を守るため上空から常に監視する目のような存在です」Benjamin David氏: XSun 創業者、CEO

David氏は次のように述べます。「森林地帯の野生生物や植物の観察と監視に利用することも考えています。海洋では、軍事や環境保護目的での広範囲の監視や、原油流出や不法投棄の発見といった用途も可能です」

人間が監督しなくても、オートメーションにより、ドローンがほとんどの作業を行えることが重要だとDavid氏は述べます。「宇宙衛星のオートメーション技術をドローンに応用し、あらかじめプログラムされたミッションをドローンが自ら行えるようにすることを目指しています。人間による監督が必要な場面があるとすれば、離着陸時に高い建物や他のドローンを避けることぐらいです」

磨き抜かれたデザイン

XSunの開発チームは、初期の飛行機のデザインを想起させる独創的なタンデム翼機のデザインを採用し、主翼が1枚の場合の倍のソーラーパネルの搭載を可能にしたことで、航続距離を伸ばしました。2枚の主翼は前後に配置し、全てのソーラーパネルが常に太陽の光を吸収できるようにしました。「このデザインは空力性能の面でもいくつかの利点があります。もっとも、今日まで単葉機が主流であることから分かるように、航空業界ではこれらの利点は無視されていますが」とDavid氏は述べます。

XSunの開発チームは、最初に開発したSolarXOneのデザインを改良するため、デジタルの3Dシミュレーションを使用してドローンの表面品質と空気力学に磨きをかけました。また、クラウド版の3DEXPERIENCEプラットフォーム上でコラボレーションを行うことは、既に確定した部分系統の設定を維持しつつ、チームメンバーがアイデアを繰り返し試すことを可能にしました。

David氏は述べます。「クラウド版のプラットフォームのおかげで、強力な設計ツールやシミュレーションツールをどこからでも利用できます。移動中や遠隔地、提携先の拠点からでも作業ができます。これは私たちの基本軸となる思想とも通じるものがあります。私たちのドローンはどこでも簡単に操作できるため、働き方にも同じ考え方を当てはめるのはごく自然なことです」

XSunの開発チームは、複合材料を使用し、設計を最適化することで、機体の重さが25kg未満、翼幅が4.5mを超え、最大積載量7kg、連続12時間以上の飛行が可能なドローンを開発しました。(画像 © Jeremy Levin)

2020年半ばに行われた耐久試験にでは、最終的に、XSunが設計した最新のドローンは積載物を載せた状態で12時間の炭素排出ゼロの自律飛行に成功し、600kmを飛行しました。

長距離飛行を可能にする、機体の軽量化

XSunのドローンは、重さ25㎏未満で、翼幅は4.5mを超え、最大積載量7㎏、少なくとも連続12時間以上飛行することができます。軽量化を図るため機体全体に複合材料を使用しています。開発チームの目標は、20時間の連続飛行の実現です。

機体が軽いということは、世界中の国で利用できることを意味します。また、軽いほど航続距離も延びます。用途が広がると、課題も大きくやり甲斐があると、David氏は述べます。

「技術的な問題や、規制、予算に関する問題など、毎日のように新たな課題が発生するので、非常に刺激的なプロジェクトです。新しい時代が今、幕を開けようとしています。陸海空のいたるところで自律機械が働き、互いに連動し合うようになるでしょう。再生可能エネルギーが現時点で既に利用可能なものであり、遠い未来ではなく今すぐに利用すべきものであるというメッセージを伝えることができれば、私たちのミッションは完了です」


XSunは、破壊的イノベーションの創出を支援する3DEXPERIENCE Labのメンバーです

トップ画像:XSunの長距離飛行のソーラードローンを用いた調査活動として、石油やガスのパイプライン調査、鉄道路線調査、海上での原油流出や不法投棄の発見、野生生物、森林、家畜の監視などが想定されています。(画像 © Jeremy Levin)


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