※本ブログは、SIMULIA Blog （英語版）で既に発表されたブログの日本語参考訳です。
ワイヤレス化が進む世界では、医療、通常の業務、娯楽に使用するスマート デバイスから、ある場所から別の場所へと移動する乗り物に至るまで、すべてがアンテナに依存しています。 私たちの日常生活にあまりにも溶け込んでいるため、アンテナについて考えることさえしません。もし考えるとしたら、屋根の上のテレビアンテナや、電話やラジオから伸びる棒を想像します。しかし、現実ははるかに複雑です。
「アンテナは単なる放射点にすぎない」と、無線技術の大手メーカーInovonics社で高齢者向け住宅および商業セキュリティ市場におけるアプリケーション開発を担当する、ハードウェア設計エンジニアMark Zakhem氏は述べています。 「つまり、望むか望まないかにかかわらず、あらゆるものがアンテナになり得るということです。」
幅広い可能性により、個々の使用シナリオに合わせてアンテナ設計を正しく、あるいは間違った設計から学ぶための無限の機会がもたらされます。たとえば、特定の状況に最適なアンテナの形状は、円形、正方形、ポール、らせん形、さらにはプリント基板上のフラットパッチなどさまざまです。特定の周波数範囲で、多くの場合、特定の放射パターンで放射する必要があります。そして、それぞれが周囲の環境に対してさまざまな方法で反応します。
「Inovonics社ではほとんどの製品に独自にカスタマイズプリントされたアンテナが必要です。」とZakhem氏は言います。
「各アンテナは、必要な製品または環境に合わせて特定の周波数で放射するように調整されています。しかし、周囲の環境にある物質が干渉し、理想的な周波数点からのずれを生じさせ、通過帯域を低域側にシフトさせ、事実上アンテナを離調させる可能性があります。私たちはそれらのシナリオに基づいてアンテナを作成します。たとえば、周囲に何もない放射アンテナは、人の顔の近くに置いたり、歩き回っているときに手に持ったりするハンドヘルド製品用に選択するアンテナとは大きく異なります。」
アンテナ設計における課題
より正確なアンテナの設計を導き出すことは、しばしば黒魔術にたとえられます。実際、この仕事に使用されるツールの 1 つは「ブラック マジック スミス チャート」と呼ばれています。これは、無線周波数技術者が使用するスミス チャートのバージョンで、アンテナの設計と分析のための追加パラメータが含まれています。
「さまざまな状況に合わせてアンテナを設計することは、非常に創造的な作業です」とZakhem氏は話します。 「アンテナが動作する環境に特有のエンジニアリング上の課題が含まれています。たとえば、アンテナは筐体内にあるのか？近くにプラスチックや金属があり、アンテナの調整がずれることはないか？もしそうなら、その位置で適切に機能するアンテナをどのように設計できるか？これらすべてのパラメータを考慮して設計することが重要となります。」
今日のアンテナの精度と信頼性を達成するには、理想的な周波数ポイントの先を見据えることも重要です。
「特定した周波数ポイントに一致するようにアンテナを設計し、そこで評価を終了した場合でも、アンテナが動作する環境によって信号が失われる箇所が発生する可能性があります」とZakhem氏は述べています。 「動作環境でアンテナを確認し、アンテナがエリア内にどのように散乱しているかを確認し、それらの箇所を見つけることが必要です。設計にこれらの測定値を含めないと、通信しようとしている製品のアンテナで信号の問題が発生する可能性があります。」
シミュレーションによる微調整
高度なアンテナ設計に必要な評価範囲と精度を得るには、シミュレーションが不可欠です。 Zakhem 氏は、学部および修士課程での研究を通じてさまざまなシミュレーション用ソフトを使用してきましたが、SIMULIA の CST Studio Suite ® がアンテナ設計に最適であると感じています。
「アンテナ設計は、他のテクノロジーと同じくらい奥深くそして高度でありながら、ユーザー インターフェイス レベルで使いやすいプログラムが必要とされます。」とZakhem氏は指摘します。 「CST Studio Suite は、これら両方の仕様を完璧に融合させたものでした。これにより、高度な機能が他のプログラムよりもアクセスしやすくなり、見つけやすくなります。 CST を使用すると、さらに多くの機能を利用できるようになります。」
特殊な環境でのパフォーマンスの最適化
Zakhem氏は、CST Studio Suite の機能と使いやすさのお陰でアンテナ設計における複数の課題にも取り組むことができたと言います。CSTを使用することで複数のプロトタイプを準備する必要がなく、運用パラメータや状況パラメータに基づいた設計の最適化がはるかに簡単になります。
「私たちは独自の環境全体を再現し、その中でアンテナがどのように機能するかをシミュレーションすることができます。」とZakhem氏は話します。 「私たちはこれらのツールを使用して、アンテナの最終的な性能測定値を特定し、改善が必要とされる領域があればそれを特定します。」
これは、標準的なデザインを完璧に仕上げるという点をはるかに超えています。 3D シミュレーション機能により、これまで不可能だった革新的な手法と設計戦略が可能になりました。
「私は過去 1 年半で、これまでにはないような型破りなアンテナをいくつか構築してきました。これらの作業は3D シミュレーションなしでは不可能だったと思います。」とZakhem氏は言います。 「奇抜アンテナ設計のプロトタイプを作るのに何か月も、何年も費やす代わりに、良い結果が得られるまで複数のシミュレーションを実行できるので、本当の意味で創造性の限界を打ち破ることができると感じます。これにより、これまではアンテナを設置することすら考えられなかったような状況にもアンテナを設計できるようになりました。」
新しい設計の検証
電場、磁場、遠方界測定の 3D 結果は、Zakhem氏の設計に重要な次元を追加します。これらのレンズを通してアンテナを観察することで、各新製品の性能、位置、設計を検証することができます。
「電場・磁場・遠方界を観察することで、アンテナの性能について異なった視点を持つことができます。」とZakhem氏は言います。 「電場と磁場の振る舞いを見ることで、これらが正しい箇所から適切に放射されているかどうかを理解するのに役立ちます。この方法は、これらの製品に取り組んでいるエンジニアにとって、設定が正しいことを知るための良い検証手法です。一方、遠方界を見ることは、アンテナの放射パターン、つまり電磁場がどのように外部へ出力されるかを理解するのに役立ちます。これは、アンテナを配置するのに最適な場所や、そのパターンを最適化するために設計を変更する必要があるかどうかを理解するのに役立ちます。」
より優れた、より高速な設計
Zakhem氏は、現在および将来において、彼が使用する高度な 3D モデリングがより優れていて、より早くより革新的な製品設計の原動力であると考えています。
「3D モデリングがなければ、アンテナの研究開発にはさらに長い時間がかかり、さらに困難になるでしょう」とZakhem氏は指摘します。 「プロトタイプの作成により長い時間を要し、より多くの修正が必要になります。これは、作業に使用するモデルがなければ、実際の実験室での測定値やデータ ポイントに頼らなければならないためです。一方で、モデリング システムを利用できるということは、作業をより適切かつ迅速に実行し、動作する環境で最高のパフォーマンスを発揮するように各アンテナ設計ができます。そして製品の設計から市場投入まで、全体的にwin-winの状況ができるです。」
一方、3D シミュレーションは進歩するテクノロジーを活用することで、エンジニアリングを成長させる上で重要な役割を果たします。
「CST Studio Suite はエンジニアとして、特にアンテナ設計者としてのスキルを向上させるのに役立ちます」と Zakhem 氏は話しています。 「デザインで創造性を発揮し、直感的にデザインし、ラボ環境ではできない新しいことを試す自由を与えてくれます。それは私がエンジニアとして成長するのに役立ち、私が開発する製品で何が可能になるかについて新たな洞察を与えてくれます。」
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3Dソフトウェア市場におけるパイオニアであり、3DとPLMソリューションのワールド・リーダーであるDassault Systèmes（仏）の日本法人です。