※本ブログは、SIMULIA Blog (英語版)で先に公開されたブログの日本語参考訳です。
要約
電子機器は、他の機器に干渉を与えず、また外部からの干渉に耐えられることを保証するため、電磁両立性(EMC: Electromagnetic Compatibility)規格への適合認証が必要です。設計段階でのEMC性能を評価し、認証試験を仮想的に再現するために、シミュレーションの活用がますます進んでいます。これには、試験対象機器(DUT: Device Under Test)とその試験環境を正確に再現したバーチャルツインが必要となります。
リバブレーションチャンバー(反射反響室は、機器が外部の電磁波に対してどの程度影響を受けるかを試験するための重要な設備です。残響試験室の壁やスターラーは電磁波を反射し、統計的に均一な電磁場を作り出すことで、全方向から機器に与えるように設計されています。本ブログ記事では、SIMULIA CST Studio Suite を用いて残響試験室をどのようにモデリングおよびシミュレーションできるかをご紹介します。
リバブレーションチャンバーのシミュレーションにより、試験技術者は適切な試験室の設計やDUTに最適な構成を見つけることが可能になります。バーチャル試験室は、開発の初期段階で感受性を解析し、試作機の製作に入る前に問題を解決することも可能にします。これにより開発コストと試作の手戻りを削減し、製品の市場投入を加速することができます。
EMCシミュレーションとは何か?
製品を販売するためには、製造者がEMC規格への適合を証明できなければなりません。EMC規格は国や市場によって多数存在し、すべての関連規格を満たすためには膨大な試験が必要になることがあります。シミュレーションは、以下のようにEMC試験にかかる時間とコストを削減する手段として活用されています。
- 製品開発中に従来実施されていた多くの物理試験は、バーチャルテストに置き換えることができます。シミュレーションは迅速に実行でき、物理的な試作機の製作も不要です。
- シミュレーションにより、設計が確定する前の開発初期段階でEMCの問題を明らかにすることができます。問題が特定さえれた場合、手戻りを減らして迅速に解決可能です。
- 規制当局はますますシミュレーション結果を認証プロセスのデータの一部として受け入れており、これにより物理試験の回数を削減できます。
EMCに関する考慮事項は大きくいくつかのグループに分けられます。特に重要なのは、「エミッション」(装置が発生する電磁場や電流による干渉の可能性)と「サセプティビティ」(他の装置や外部からの干渉に対する装置の脆弱性)の区別です。これらはさらに、干渉が装置に入る経路や装置から出る経路に応じて「放射」と「伝導」に分類されます。それぞれに対して異なる試験セットアップが必要です。放射サセプティビティ試験の場合、試験室はしばしばリバブレーションチャンバーの形態を取ります。
リバブレーションチャンバー(反射反響室)とは?
リバブレーションチャンバーは、対象となる周波数帯で反射性を持つ壁で囲まれたシールドルームで構成されています。チャンバー内には電磁場を発生させる送信アンテナが設置されています。チャンバーは共振器の役割を果たし、試験室全体に電磁場が分布します。また、チャンバー内には定常波や特定のモードの形成を防ぐための不規則な金属面であるスターラー(攪拌器)が設置されており、これにより電場の均一性が保たれ、統計的に均一なランダム場が生成されます。

DUTに影響を及ぼす統計的に均一な電磁場は、人工的なもの(例:Wi-Fiや携帯電話ネットワーク)や自然現象(例:雷やその他の環境電磁効果(E3))といった実際の干渉シナリオを再現しています。
リバブレーションチャンバーの性能は、電磁場の均一性と最低使用周波数(LUF: Lowest Usable Frequency)によって制限されます。一般的に、チャンバーが小さいほどLUFは高くなり、利用可能な周波数帯が狭まるため、その有用性が制限されます。テストチャンバーの技術者は、アンテナとスターラーの配置や設計を最適化し、幅広い周波数で均一な電磁場を生成しつつ、コンパクトな設計で建設コストや設置スペースを抑えることを目指しています。
リバブレーションチャンバー設計におけるMODSIMの利点
統合モデリング&シミュレーション(MODSIM)により、測定を行わずとも試験室内の任意点・任意周波数における電磁界の分布を計算することが可能です。これにより、場の均一性や最低使用周波数(LUF)を設計段階で解析できるため、後から問題が生じるリスクを低減できます。
リバブレーションチャンバーの設計には多くの重要なパラメータが存在します。例えば、試験室の寸法、スターラー(攪拌板)の形状、スターラーとアンテナの配置などです。IEC 41000-6-21などの規格では、200MHz~3000MHzの周波数範囲において50種類の異なるスターラー位置が指定されています。これらの設計パラメータをパラメータスイープまたは最適化することで、攪拌器数やチャンバー体積を最小化しつつ設計要件を満たす組み合わせを見つけることが可能になります。

リバブレーションチャンバーのモデリングおよびシミュレーションのワークフロー
詳細なチャンバーモデル
上記のリバブレーションチャンバーは、SIMULIA CST Studio Suiteで設計および最適化されました。これは、EMCシミュレーションの特定の要件に合わせた多くのワークフローや機能を備えた業界をリードする電磁界シミュレーションツールです。
CST Studio Suiteには、様々なシミュレーション対象に対応した複数のソルバーが含まれています。中でも強力な3D TLM(Transmission Line Matrix)ソルバーは、多くのEMCアプリケーションに適しています。TLMソルバーはオクトリーメッシュ(Octree meshing)をサポートし、空間のメッシュセル密度を大幅に削減できます。これにより、空洞部分の計算負荷を軽減しながら、エンクロージャーの開口部やプリント基板(PCB)などの詳細形状は、重要な細部を正確に捉えることが可能です。
ただし、TLMは時間領域法であるため、Q値の高いリバブレーションチャンバーではエネルギーが減衰するまでに数マイクロ秒を要する可能性があり、正確な電磁場計算には比較的長時間のシミュレーションが必要となることがあります。そのような場合は、周波数領域ソルバー(Fソルバー)がより適切適切な選択となることもあります。Fソルバーは、adaptive tetrahedralメッシュ(適応型四面体メッシュ)を用いてジオメトリをメッシュ化し、指定された各周波数点で電磁界を計算することで、目的の周波数範囲をカバーします。
リバブレーションチャンバーの設計とモデリングが完了すると、準備が整います。一般的に、バーチャルテストにおいてはテストチャンバーの正確な形状は、重要ではありません。なぜなら、リバブレーションチャンバーが統計的に均一な電磁場を生成することが既に実証されているからです。
平面波重ね合わせに基づくチャンバーモデル
バーチャルテストを加速するために、CST Studio Suiteでは平面波重ね合わせツールを開発しました。このツールは、ランダムな位相と偏波を持つ平面波のセットを生成し、それらを用いて試験領域内の電場と磁場をシミュレーションします。
モンテカルロ法を使用してランダム化された波のセットを反復し、得られたピーク電場がIEC規格の均一性要件を満たすことを確認します。
この平面波重ね合わせ法の利点を示すために、TLMソルバーを用いて無線ルーターのEMC試験シミュレーションを実施しました。チャンバー全体ではなく、1 m³の試験領域のみを解析しました。100 MHzから7.25 GHzまでの広帯域を対象としつつ、ルーターのEMC性能を効率的に評価することができました。
シミュレーション結果は、筐体の継ぎ目からの結合経路を明らかにし、技術者は物理的な試作品を作成し試験することなく、放射感受性を低減するための設計改良を行うことができました。


結論
リバブレーションチャンバーは、EMC試験において均一な電磁界を生成し、干渉に対する感受性を解析するために広く使用されています。バーチャルEMC試験は、物理的な試験を削減または置き換えることができ、解析時間の短縮やコスト削減につながるだけでなく、設計者が開発のあらゆる段階でEMCを解析できるため、リスクの軽減にも寄与します。バーチャルリバブレーションチャンバーは、完全な3Dモデルで構築する方法と、重ね合わせた平面波を用いて再現する方法のいずれかで作成可能です。どちらの手法も、技術者が製品のEMC性能をバーチャルツインを使って評価できるようにします。

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