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Design & SimulationApril 21, 2026

BORAはPowerFLOWを活用したバーチャルテストで時間とコストの節約に成功

オーストリアのビルトイン・キッチン メーカーは、高度な設計およびシミュレーションツールを活用し、洗練されたキッチンに対応した革新的調理換気ソリューションを提供。
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Avatarダッソー・システムズ株式会社

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※本ブログは、SIMULIA Blog (英語版)で先に公開されたブログの日本語参考訳です。

本ブログ記事作成においてBORA 技術部長 Dr. Johannes Eben にご協力いただいています。

現代の住宅において、キッチンは家族との交流を図る中心的な場所であり、また来客をもてなす場としても重要な存在となっています。キッチンのデザインや機能性は、より多様な用途に対応するために進化しており、実用的な空間から多目的な生活空間へと変化しています。

Silestone Institute の研究者たちが発表した「グローバルキッチン調査」によると、現代のキッチンは伝統的な役割の枠を超え、社交、仕事、食事などさまざまな目的のために機能していることが明らかになりました。快適な座席や革新的なデザイン要素を備えたオープンなレイアウトは、人々が集まって楽しめる魅力的な社交空間にキッチンを変え、同時においしい食事を作るための実用的な快適さも提供します。

BORA Lüftungstechnik GmbH(換気技術)の創設者、Willi Bruckbauerは、革新的なコンロトップ排気システムを提供することにより、現代のキッチンデザインに大きな影響を与えました。キッチン業界で20年以上の経験を持つ熟練の大工であるBruckbauer氏は、キッチンをより魅力的にしたいと考えていました。

彼は音がうるさく、視覚的にも目障り、または単に見た目が悪いもののキッチンに必要不可欠な従来の天井設置型レンジ換気システムの代替案を探していました。

料理中に出る臭いや煙、熱を効果的に排気することは、キッチンに立つ人や来客の両者にとって快適で安全なキッチン環境を保つために重要です。
Bruckbauer氏の実践的な技術と顧客ニーズを深く理解する情熱が結実し、BORAは極めてコンパクトで洗練されたデザインの排気システムを開発しました。これは、特に従来のレンジフードに比べて優れたソリューションでした。

BORAの換気技術はさまざまなサイズや機能オプションで展開されており、それぞれが周囲のコンロから空気を引き込む低圧エリアを作り出します。BORAのクロスフロー吸引は、蒸気や蒸散物が上昇する速度(最大1メートル毎秒)よりも速くそれらを吸い込み、排除します。

流線型で目立たないデザインにより、見苦しい天井設置型の換気扇が不要になり、キッチンスペースのデザイン自由度が向上しました。さらに、防音材が低騒音モーターの音を軽減し、高排気効率により頭の高さではクリーンな空気が保たれます。

製品設計における物理の可視化

調理蒸気や臭いを発生源(コンロのすぐ上)で捕らえることができるコンロトップ排気システムを開発するには、物理現象を理解する必要がありました。

排気システムの最適な流れ状態を検証するために、Bruckbauer氏とBORAのエンジニアリングチームは、複数の物理試験を実施するには膨大な費用と時間を要することを認識していました。なぜなら、裸眼では圧力、速度、音、気流などを直接見ることはできないからです。

こうした変数は、鈍体周りの流体の流れを評価するための可視化塗料の使用や、騒音源を特定する音響カメラを利用した実験により可視化が可能となりますが、望ましい結果を得るまでには非常に高い費用が生じます。

長時間かかる物理試験プロセスとそれに伴う費用を削減するため、BORAは設計の最適化をより早く効率的に行えるデジタルソリューションを探しました。それは設計の初期段階から活用できるものでなくてはなりませんでした。

コンロトップレベルの排気口は、従来の天井設置フードと同様に、システム内の気流を効果的に管理しなければなりません。入口サイズ、流量制限、ブロワーの設計といった重要な要素が、蒸気の効果的な排出には欠かせません。

主な課題の一つは、コンロ下の限られた空間においても、高効率の排気性能を確保するために、流体力学的な見地からアプローチすることでした。

最適なアプローチの発見

計算流体力学(CFD)ソフトウェア市場は、競争力のある開発者がさまざまなソリューションを提供しています。BORAは、複雑なモデリングに対応できる強力なソルバー技術を備えたCFD製品を必要としており、大規模なシミュレーションを効率的かつ正確に実行できることが求められていました。

さらに、BORAは主要な関係者全員が容易にアクセスできるクラウドベースのソリューションを望んでいました。加えて、高性能コンピューティングをクラウド上でサポートするシステムであることが必須でした。なぜなら、エンジニアがクラウド上でCFD解析を行えるため、高価なハイエンドコンピューターの購入費用を節約できるからです。

BORAの設計エンジニアリングチームは、新たなプロジェクトが立ち上がる前から、Dassault Systèmesが提供するSOLIDWORKS® 3D機械設計CADソフトウェアに満足しており、現在の能力を拡張するために再び同社と協力することを検討しました。
SIMULIAの格子ボルツマン法に基づく物理ソルバーであるPowerFLOWは、設計テストのすべての要件を満たすように思えました。

しかし、BORAの経営陣は、この技術がエンジニアリングチーム向けに非常に高精度のシミュレーションデータを生成できることを確信する必要がありました。

そこで、BORAはDassault Systèmes主催のオンライン空力音響ワークショップに参加し、PowerFLOWの能力と潜在的な利点に興味を持ちました。彼らは概念実証(PoC)に合意し、PowerFLOWの空力音響挙動のシミュレーション効果を、従来の実験的手法と比較して評価しました。

このPoCの目的は、BORAの物理的試験装置で以前に行われた音響測定とシミュレーションデータを照合し、検証することでした。試験装置は、最新世代のマイクロフォンアレイを備えた半無響室です。

空気力学から見た流れと騒音源の発生メカニズム

概念実証(PoC)では、BORA Professional 3.0コンロトップ排気装置の空力音響挙動が、システムの遠心ファンの単一動作点において解析されました。

図1

PowerFLOWの高度なCAD前処理ソフトウェアであるPowerDELTAを用いて、製品モデルの詳細なMeshジオメトリが作成されました(図1)。
コンロトップ排気装置モデルの関連する複雑な形状の詳細は、主要な簡略化をせずにそのまま保持されました。その後、PowerCASEを使用してシミュレーションシナリオが定義されました。

シミュレーションシナリオの設定には、適切な境界条件の定義、BORAの試験装置を模した半無響室環境のモデリング、すべての関連する精細化領域の設定、音圧変動を記録するための仮想マイクロフォンプローブの設置が含まれています。

仮想マイクロフォンは、BORAの実際の実験セットアップと同様の位置に配置されました。プローブの結果は、PowerFLOW simulation suiteの音響解析ソフトウェアであるPowerACOUSTICSで生成および分析処理されました。

予測された騒音レベルは、BORAの実験結果と良好な一致を示しました。マイクロフォン信号の関連するスペクトル特性は、広い周波数帯域にわたり、精度よく予測されました。

図2

詳細な空力解析により、コンロトップ排気装置を通る気流経路について有意義な知見が得られました。この解析では、高速流と渦度の集中する領域が明らかになり、これらの領域が騒音源の発生およびその後の伝播につながる可能性が示されました(図2)。

図3

高度な空力音響ポストプロセッシングにより、遠心ファンの羽根における主要な騒音源の存在が確認されました。これらの主要な騒音源は、遠心ファンの入口に流入する強い回転流が原因で発生しています(図3)。
空力および空力音響の結果のグラフィカルな可視化は、高性能CFD可視化ツールであるPowerVIZを用いて行われました。

まとめると、上述の結果は、PowerFLOWが広い周波数帯域にわたる音圧レベルを正確に予測できる能力を示すとともに、実験手法では観察困難な流体力学の詳細な視覚的洞察を提供できることを証明しています。

百聞は一見に如かず

概念実証(PoC)の成功結果は、PowerFLOW採用の決定に大きな影響を与えました。BORAのエンジニアは、従来の実験手法では得られなかった製品内の複雑な流体相互作用の理解を深めるためのソフトウェアの能力を高く評価しました。

PowerFLOWが提供する視覚的洞察と詳細なデータは、BORAの設計における音響および空力性能の理解を一層深める助けとなりました。

また、BORAはSIMULIA Cloudも活用しており、ブラウザベースでソフトウェアにアクセス可能です。クラウドアクセスはリモートワークを促進し、迅速かつ効率的なデータ共有によるコラボレーションを可能にします。
さらに、複雑なシミュレーションの課題をリアルタイムで3DEXPERIENCEクラウドプラットフォーム上で技術サポートチームと共有できるため、ダッソー・システムズの技術チームからのサポートも受けやすくなっています。

3DEXPERIENCEクラウドプラットフォームは最大1200コアのクラスターを活用しており、BORAは高性能ワークステーションの購入や大規模な計算資源の維持を必要としません。SIMULIAはコストを削減し、プロセスを加速させることで、複雑なシミュレーションを数時間以内に完了させることを可能にしています。

BORAは、PowerFLOWによる内部システムにおける流体の動的挙動の視覚的検査の利点を何度も強調しており、それが意思決定プロセスや設計改善に役立っています。この能力は、PowerFLOWシミュレーションを用いた空力最適化など、最新の開発において重要な役割を果たしており、物理的な試作の低減を可能にしています。

戦略的活用により、BORAの製品開発戦略においてPowerFLOWは重要なツールとなっており、効率的でコスト効果の高い製品開発を実現しながら、物理的な試作の必要性を最小限に抑えています。

「SIMULIAは、私たちの製品の効率を物理的に可能な限界まで引き上げる手助けをしてくれます。」
— Dr. Johannes Eben BORA 技術責任者


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