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Design & SimulationApril 28, 2025

エンジニアに聞く – 機械学習とニューラルネットワークとは?

機械学習を使用した物理ベースのシミュレーションテクノロジーを専門とする、 SIMULIA のテクノロジー・シニアマネージャーである Jing Biへインタビューを行いました。
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Avatarダッソー・システムズ株式会社

※本ブログは、SIMULIA Blog (英語版)で既に発表されたブログの日本語参考訳です。

ニューラルネットワークは、脳のシミュレーションから生まれたもので、機械学習の一分野です。これは人間の脳の働きを理論的にモデル化したものであり、入力データと出力データがネットワークに与えられることで、実際の脳に似た形でニューロン間に異なる強度の接続が形成されます。

ディープラーニングにおいては人間が抽出したルールをプログラミングする必要がなく、データから独自で学習を行います。これは、とても画期的なことです。ハードウェアのテクノロジーが継続的に成長するにつれ、ディープラーニングは科学技術計算の方法に大きな影響を与える可能性があります。

物理ベースのシミュレーションは、製品設計のガイドとして広く使用されています。ただし、問題の物理現象や規模によっては、シミュレーションの実行に数分から数時間、場合によっては数日かかる場合もあります。多くの設計案や動作条件に対する性能を検証するには非常に時間がかかる作業です。

私はニューラルネットワークを使うことでこの課題を解決できるのではないかと考えています。ニューラルネットワークは物理ベースのシミュレーションから学習することで、3D形状や材料特性を認識します。そして、さまざまな設計や条件における機械的なシナリオの物理応答を予測することを学習します。

ここでEVの設計を例に挙げると、EVのバッテリーパックの設計は側面衝突時の安全基準を満たさなければなりません。バッテリーパックの設計を変更するたびに、物理ベースのシミュレーションを実行して、設計が安全要件を満たしているかどうかをテストする必要があります。シミュレーションジョブが開始されると、エンジニアはシミュレーション結果を得るまで数時間から数日待つことになります。一方、トレーニングされた機械学習モデルを使用すると、エンジニアは設計変更を送信して数秒でそのシミュレーション結果を確認することができるようになります。機械学習による予測から得られる結果は、物理ベースのシミュレーションと同様に豊富な情報を提供します。この手法を用いて、私たちは衝撃力が時間の経過とともにどのように変化するか、そして衝突イベント全体の3Dアニメーションを確認して、衝撃時にバッテリーセルに生じる現象、特にバッテリーパックの変形によりショートが発生するかどうかを把握することができます。

他の事例をもう1つ挙げます。航空機の着陸装置は着陸時に飛行機全体の重量と加速度に耐える必要があります。着陸速度、角度、気象条件によっては、着陸装置の部品に荷重がかかり、安全上の懸念が生じる場合があります。物理ベースのシミュレーションによってトレーニングされた機械学習モデルを使用すると、実際のシミュレーションを実行する場合に比べ、着陸装置の応力状態を数ミリ秒と高速に取得することができます。

このように、物理ベースのシミュレーションからトレーニングされた機械学習モデルは、空間と時間における3D結果を数千倍の速度で予測します。これにより、これまで数週間または数か月の設計サイクルを要していたものが数時間に短縮され、ほぼインタラクティブな3D設計環境が可能になり、製品設計と最適化の方法が大きく変わる可能性を示しています。

近い将来、ニューラルネットワークによるほぼ瞬時の3Dフィードバックを通じて、自動車メーカーは安全性を高めるためにバッテリーパックの設計を迅速に評価し、最適化できるようになります。医師は臨床試験の適合候補を迅速に選別できるようになります。航空機メーカーは耐久性に優れた着陸装置を設計できるようになるでしょう。パッケージのボトルはさらに軽量化され、より持続可能なものになる可能性があります。これらすべてが、これまでより大幅に早いペースで実現することが可能となるのです。

機械学習を使用すると、シミュレーションがよりスマートになり、新たな課題を解決することできるようになります。専門家によるシミュレーションは、設計者や臨床医の手に届く形で活用されるようになるでしょう。さらに、シミュレーションの表現が学習され、その知識が蓄積されます。シミュレーションによる詳細な3D情報は、機械学習においてバランスの取れた信頼性の高いAIのトレーニングをするという観点で不可欠であり、限られた実験観察を補間してくれる非常に重要なデータと言えるでしょう。

今後、シミュレーションと機械学習が連携して科学技術コンピューティングの方法をどのように変えていくのか。近い未来にその結果を目にするのを待ちきれません。

                     Jing Bi, PhD

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