工場DX、スマートファクトリー実現のミッシングリンク「MES」。工場に欠かすことが出来ない仕組みにも関わらず、その重要性や認知度にまだまだ課題があるのが、ISA-95のLevel3に該当する「MES(MOM)」です。
はじめまして。DELMIA Industry Process Consultantチームです。
みなさまは、MESという仕組みにどのような印象を持っていますか?私たちのチームでは、DELMIA Aprisoと言うMES製品のコンサルティングや技術支援を行っております。私たちは、このMESを製造業に関わる多くの人に理解いただき、正しく導入していただくことが、日本の工場、そして製造の強化につながると考えております。
MESとは、「Manufacturing Execution System」の略称で、日本語では製造実行システムと訳されることが多いです。その名の通り、製造を実行するために、着手・完了、製造の履歴情報などを管理する仕組みで、少し前までは、「工程管理システム」と呼ばれることもありました。なお、DELMIA AprisoはMESではなく、MOM:Manufacturing Operations Managementと表現することも多いですが、MOMについては、次回以降詳しくお伝えいたします。
ではなぜ、このMESが近年注目に集まっているのでしょうか?実は、MESは半導体業界を始めとする装置産業など、一部の産業では1990年代から導入が進んでいます。一方、高い現場力による人手のオペレーションを補うことができる、多くの組立産業で導入は遅れておりました。しかし、近年のスマートファクトリー、Industry4.0、IoTなどの所謂「バズワード」の中身の実現化を検討する中で、大きな注目を浴びるようになってきております。詳しい説明は、私たちのチームで以前執筆したホワイトペーパーに譲りますが、ここでは、大きく2つその背景をお伝えします。
1. 現場情報と経営情報の分断
現在、日本の製造業におけるデジタル投資の多くが割かれる、経営管理の仕組みであるERPが属するLevel4、そして、IoTなどの情報を始めとする現場情報を集めるLevel2。2000年代よりERPにより経営情報の可視化が進み、また2010年代でIoT の取り組みにより取得できるデータが増えているにも関わらず、これらのソリューションや取り組みだけでは、経営と現場のデータは扱うデータの粒度が異なるため分断されたままです。これを繋ぐのがLevel3のMESです。
2. バラバラな仕組みの統合
日本の製造業のアイデンティティとも言える「改善」。それは、デジタルの世界でも大きく役立っています。一方で、現場のボトムアップでの改善によるデジタルソリューションの導入は、工場間だけではなく、工場内でもバラバラな仕組みがいくつも存在する企業も少なくないのが日本の現状と捉えております。このような、バラバラな仕組みを一つの仕組みに統合することもMES(MOM)では実現可能です。
これらの内容を上記のような画像、デモ、事例などを行ってお伝えすると、MESそして、そのモデルを定義した、ISA-95についての必要性や重要性も理解いただけることがほとんどです。しかしながら、我々の悩みは、説明をすればわかっていただけるものの、海外では、ISA-95のモデルが一般化しているのに対して、日本ではその理解が浸透していない現状です。諸外国がISA-95のモデルに対応して工場のデジタル化を推進する中、この現状は、日本の工場のデジタル化にとって大きなハンディになるのではないか?と日ごろから考えており、ホワイトペーパーの執筆、講演や研究会での紹介などを行ってきました。
そこで、次のステップとして考えたのが、以前より協力関係を築いておりました、北九州高専様との連携による、社会人向けリカレント教育のカリキュラムです。北九州高専様とは、こちらのプロモーション動画にあるように、若い世代に最先端のデジタルソリューションに触れてもらうことが、製造業の底力の向上に繋がると信じ、以前からさまざまな取り組みを実施させていただいておりました。また、高専の先生向けへの講義も数コマではありますが、トライアルで実施させていただいておりました。
実際に一つのカリキュラムとして講義をするとなると、それなりの準備が必要となります。幸いCOVID発生直後の客先に訪問ができなかったタイミングで、これまでに溜まったノウハウの整理を実施。そして、こちらの資料に加筆を行い、1つのカリキュラムとして成り立たせるための準備を進めました。
普段、民間企業をお客様として対応することが中心であるダッソー・システムズとしては、このような公で行うノウハウがあまりなく、担当営業も駆け回っての対応とはなりましたが、無事入札も通過し、実施したのがこちらのカリキュラムです。
計27回、全36時間の講義実施にあたって、非常に密なカリキュラム内容を作成することで講師たちの自信にもなり、次のステップにもいろいろなアイデアが溜まってきました。
講義の様子や、参加者のコメント、そして、なぜMESではなく、MOMなのか?を明らかにするカリキュラムの内容については、中編で説明できればと思います。