もし私たちが人間の体を正確に、そして安全に理解し、モデル化し、探求し、テストし、治療をすることができたならどうでしょう。当社がこれまで航空機に対してそうしてきたように、です。ボーイング777のバーチャルツイン化が、航空機の設計・製造における転換点であったように、人体のバーチャルツイン・エクスペリエンスも、人体の理解における転換点となるでしょう。人体のバーチャルツイン・エクスペリエンスには、モデリング、シミュレーション、インフォメーション・インテリジェンス、コラボレーションといった全ての技術が統合されます。私たちはこのエクスペリエンスを通じて、生物科学、材料科学、情報科学の知見を統合的に適用することができます。このエクスペリエンスによって私たちは、目に見えないものを理解し、目に見えるものを再現できます。技術者、研究者、医師、そして患者といった、人体に関わる全ての人が、バーチャルツイン・エクスペリエンスを介して、目に見えなかったものを見ることができるのです。たとえば、ある薬剤の作用機序や、ある手術からどのような結果が見込めるかといった課題を可視化し、テストし、理解を深め、その後のシナリオを予測することができます。
このような現実とバーチャルで構成された新しい世界は、社会や道徳、法律、製造の新しい枠組みを必要とします。それは、このコロナ禍から見ても明らかです。個別化医療の変革には、経済論や技術論の前にまず、行政と産業界が率先して取り組まなければなりません。「未来を拓くのは人間」であり、人体のバーチャル・エクスペリエンスが新たな可能性を拓きます。これこそ当社のパーパス(事業目的)である、自然環境や人々の生活、生命と製品との調和なのです。
ベルナール・シャーレス:ダッソー・システムズ取締役会副会長、CEO(最高経営責任者)