ダッソー・システムズでサプライチェーン・生産技術・生産管理・製造実行領域(DELMIA製品)でコンサルタントをしている立田です。
このシリーズでは持続可能な世界創り(SDGs)を見据えた社会の変化やそれを支える当社の理念経営、ビジョン・テクノロジー、サービスなどについてできるだけ分かりやすく語っていきます。
前回は「ダッソー・システムズの経営理念・ビジョン」について話をしました。今回は当社の「当社の経営理念・ビジョン(purpose)を実現するテクノロジー」を読み解く3つのポイントを紹介していきます。
※「3つのマルチ」については後述します
まず当社が経営理念・ビジョンで提唱している「3DEXPERIENCEユニバース(3DEXPERIENCE universes)」の実現に必要な要素について振り返っておきます。
「3DEXPERIENCEユニバース(3DEXPERIENCE universes)」を実現していくということは構成する要素を表現し(モデリング)、要素間の連動性を明確にして(システムズエンジニアリング)、状況によって異なる最適解(シミュレーションや最適化)を導き出すことが必要です。
この物事を構成する要素を表現するという点が一つ目のポイントである「3つのマルチ(マルチスケール、
マルチフィジクス、マルチドメイン)」につながってきます。
ここで言う「3つのマルチ」とは下記のことを言います。
・(マルチ)スケール:ナノレベルからキロレベルまで、といった大きさや規模の粒度
・(マルチ)フィジクス:あらゆる物理現象(熱、気流や水流、圧、衝撃、粘性、音響、電磁波など)
・(マルチ)ドメイン:存在しているありとあらゆるものの分類(生物か無生物か、無生物でも人工物か自然物か)
当社オフィス内でのコロナウイルス拡散防止のシミュレーションを例に取ってみましょう。動画には当社のオフィスを再現した3Dモデルが出てきますが、そこには人間(生物)だけでなく、椅子や机、パーテーションなどのオフィス家具(無生物、人工物)など、異なるドメインが同じバーチャル空間の中に表現されていますまた、咳による飛沫の拡散も、飛沫の直径、重さ、数、口腔から吐き出される速度など物理現象(フィジクス)の各要素を数値化することで、同じバーチャル空間の中に再現できます。さらに人間・オフィス家具と言ったmmからcm単位のものから空気の流れ・コロナウイルスの飛沫というより細かな粒度(スケール)も表現されているのが分かります。
身の回りの身近な出来事を表現するにしてもスケール、フィジクス、ドメインという3軸を抑えておくことが必須なのが分かります。そして、最適化社会を実現していく上では複数の要素が特定の状況下においてどういった性能を発揮するか、どういった状態になるのかをバーチャル世界で確認することが求められます。それはこれまで以上に複数(マルチ)のスケール、複数のフィジクス、複数のドメインを含む表現・検討・最適化が求められることを意味しています。
次に2つ目のポイントである「当社のM&Aは3DEXPERIENCEユニバースの拡大につながる」です。
ダッソー・システムズは多い年には10社以上M&A(合併と買収)を行っています。下記の画像は過去約15年の代表的なM&Aを振り返ってみたもので、さきほどの3つのマルチとの関連性を筆者が分類してみたものです。それぞれ例を見てみましょう。
マルチスケールの例は2014年にM&Aをしたアクセルリス社です。現在はBIOVIAブランドの中核となっていますが、この買収を通じて分子レベルのモデリングやシミュレーションもポートフォリオに加えることができました。
マルチフィジクスの例は2015年にM&AをしたCST社です。現在はSIMULIAブランドの中で、電磁場解析を担っています。電化製品や移動サービスなど生活や産業界のほぼ全てがスマート化に向かうなか、電磁場解析は不可欠の技術となっています。
マルチドメインの例は2019年にM&Aをしたメディデータ・ソリューションズ社です。MEDIDATAにより臨床分野ソリューションとして人間(生物)、医学・薬学分野も対応することが可能となりました。
最後に3つ目のポイントである「当社は経営理念・ビジョンの実現に必要なテクノロジーを持っていること」です。
さきほど紹介した3つのマルチにそって必要なテクノロジーを持っていることを説明していきます。
マルチスケールですがナノレベルからキロレベルなどモデリングするだけではなく、モデルを使ってシミュレーションをすることも必要です。下記の画像で大まかなマッピングを載せていますが当社がマルチスケールのモデリング、そしてシミュレーションに必要なテクノロジーを持っているのが分かります。
マルチフィジクスですがここはBIOVIA、CATIA、SIMULIA、SOLIDWORKS製品があります。機能・論理であればCATIAとSOLIDWORKSがあります。物理(マイクロスケール連続体)であればSIMULIAがあります。マテリアル・サイエンスと物理(ミクロスケール連続体)であればBIOVIAがあります。
最後にマルチドメインです。元々CADを生業にしていた当社ですので無生物(人工物)は得意分野です。ここの領域ではBIOVIA(分子レベル)、CATIA、SOLIDWORKSなどがあります。地形などの無生物(自然物)にはGEOVIAがあります。また、生物分野と接点をもつブランドとして、BIOVIAやCATIA、SIMULIA、SOLIDWORKSの他にMEDIDATAがあります。
なお当社にはサプライチェーンのモデリング・シミュレーション・最適化でDELMIA Quintiqもあるなど上記だけでは語りきれない面もあります。
また、今回はCyber Physical System(*1)で言えば「実世界高度モデリング技術」の部分を中心に話をしています。当社「実世界高度モデリング技術」の層以外にも「実世界高度センシング・アクチュエーション技術」の層で言えばDELMIA AprisoやMEDIDATAがあり、VRを通したフィードバックを含めると3DEXCITEや3DVIA、CATIA、SOLIDWORKSなどもあります。「実世界超大規模データ処理技術」ではEXALEADやNETVIBESなども欠かせません。
次回は当社のテクノロジーを通じて改革を実現された、もしくはされようとしている事例について紹介します。
*1:CPSとは https://www.jeita.or.jp/cps/about/