【第7章 計算品質標準化から知識化へ】 計算品質を標準化するための方法論
前回記事で “シミュレーション・モデルの作り方が経験や知識に依存する”ことは、従来から存在している深刻で寝深い問題であることをお話ししました。これをどのように解決すべきか、その方法論はすでに体系化されており、下記の公開情報などで知ることができます。
日本学術会議、計算科学シミュレーションと工学設計分科会から2011年に出された下記の報告書は、このテーマの概観をわかりやすく知るにはちょうどよい内容と分量になっています。(筆者も委員の一人として末席で参加しました。) ・ものづくり支援のための計算力学シミュレーションの品質保証に向けて
https://blog-assets.3ds.com/uploads/2022/03/kohyo-21-h123-2-1.pdf
図が豊富で、専門用語や概念をわかりやすく説明してあるのは、計算工学会High Quality Computing研究会の伊藤忠テクノソリューションズ(当時)中村氏から発表されている下記のスライドです。 ・シミュレーションの品質保証とV&V – 国内外の品質標準、V&Vの原理、考え方 –
https://blog-assets.3ds.com/uploads/2023/09/13_jsme_sangaku_120910.pdf
体系的な成果物として出版されているのは、計算工学会High Quality Computing研究会編集による、下記の本です。 ・工学シミュレーションの品質マネジメント
http://www.jsces.org/activity/issue/standards_01.html
特に、2番目に紹介したスライド資料は、Verification & Validation (V&V)の考え方がシンプルにわかりやすく説明されてあるので、筆者はことあるごとにこのスライドをさっと読み直して、整理することが多いです。とくに、恥ずかしながら、その時はわかったつもりになってもVerificationとValidationの違いを混乱してしまうことが多いのです。そういう時は、スライド5Pにある下記の記述を読むとすっきりするのです。
=== 以下引用(VerificationとValidationは筆者が挿入)
V&Vの原理:なぜ検証だけではだめなのか?
•検証(Verification):「規定要求事項を満たすことを確認」
•妥当性確認(Validation):「特定の意図された用途又は適用に関する要求事項が満たされていることを確認」
•検証:正しく製品を作っているか?(Verification)
–仕様通りに作っているか?
–Are we building the product right?
•妥当性確認:正しい製品を作っているか?(Validation)
–顧客要求を満たす製品を作っているか?
–Are we building the right produce?
=== 引用終わり
広い意味でのシミュレーションと実験の不確かさについても言及されています。さて、方法論が体系化されていることはわかったとして、それを実践するにはどうすればいいのか。次回の記事では、それを紹介いたします。
【DASSAULT SYSTEMES 工藤啓治】