経済のあらゆる局面がデジタルやバーチャル・テクノロジーによって変革を遂げようとしている中、ヘルスケア業界も例外ではありません。ウェアラブル端末が大量の医療データを収集し、医学生はVR(バーチャル・リアリティ)を活用して手術の練習をしています。そして、新たな遠隔医療ソリューションが、リモート診療、予備検査、カウンセリングに利用されています。新型コロナウイルス感染症の流行がパンデミックの段階に入る中、デジタルやバーチャルの価値が証明されました。
こうした動きは、社会が最終的に求める医療の実現に向けた小さな第一歩であり、健康維持のための先制医療、患者個人の治療に関わる情報の共同利用(ただしプライバシー保護が大前提となる)、高額な医療費のかからない個別化(カスタマイズ)された治療法などにつながります。
ヘルスケア業界の変革は簡単なことではありませんが、行動を起こさないという選択肢はありません。世界的に見ても、政府や医療機関は、医療費の高騰、患者の増加、社会の高齢化になんとかついていこうとしています。システム全体を作り変えるには、治療法を発見、確立して、患者を診察し、治療法をカスタマイズする方法を改善して、加速させる必要があります。
ダッソー・システムズには、世界で最も複雑とされるさまざまな製品の設計、製造、メンテナンスの課題にデジタル化を適用してきた40年余りの経験があります。世界で最も複雑なシステム、すなわち「人体」を理解するためには、つぎはぎだらけのシステムでは不可能であること、多くの情報と知見に裏打ちされてはじめて「人体の可視化」が可能であることを理解しています。どの高度な工業製品とも異なり、人体を構成するひとつひとつの要素が、化学、生物学、生理学の点で全く異なっています。そのため、個別化医療は、あれば役に立つというのではなく、なくてはならないものなのです。
費用を抑えて個別化医療の技術を確立するには、「点と点をつなぐ」、すなわち異なる情報や知見を組み合わせる手段が必要になります。それにより、人体の理解に関わる全員が患者ごとに異なる特性を理解して、その患者に最も適した治療に取り組むことができます。私たちは、3Dのバーチャルな空間を活用することで、それを実現できると確信しています。科学的に正確な最新コンピュータ・シミュレーションを患者ごとにカスタマイズして、一人一人異なる人体の複雑な構造や奥深さを解明できるのです。
ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームだけが、分子の単位から臓器全体、人体に至るまで、幅広いスケールでバーチャルの世界を創り出すことができます。このバーチャルの世界を活用することで、患者の全身を把握して、患者を危険にさらすことなく治療法を試し、かつてない速さで解決策を見つけ出すことができるようになります。このほどダッソー・システムズがMEDIDATAを買収したことによって、匿名化された現実の患者データ群を適用し、こうしたシミュレーションの精度を高めていくことができるのです。高精度のシミュレーションを使うことで、研究者は時間や費用をかけずにさらに多くの候補薬をテストし、さらなる治療法や既存の治療に応用する方法を発見できるようになります。各患者の体質に合わせて素早く正確に医療機器を調整したり、次の世代を担う医師や技師の教育に活用したりするだけでなく、難しい手術をどのように進めるか計画して、分析、シミュレーションすることで、選択した方法が上手くいくよう準備することもできます。
こうしたシミュレーションは、FDA(米国食品医薬品局)との連携を通じて、人や動物を対象とした試験を検証するだけでなく、それに代わる技術として利用することも検討されています。その有効性が証明されれば、各患者の体質に合わせて、モデルのカスタマイズが可能になります。医師は事前に治療の有効性をテストして検証できるようになり、少ない費用で確実に成果を上げることができます。
ダッソー・システムズは、何十年にもにわたり、安全でサステナブルな製品を開発して、人々にサービスを提供することに注力してきました。私たちは対象とする領域を拡大し、人々の健康と誰もが健やかに育つ健康な世界を確かなものにするという究極の課題に取り組んでいます。
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