ライフサイエンス&ヘルスケアJuly 7, 2020

FEops社

高度な3Dシミュレーションで心臓の治療に貢献
header
Avatar ダッソー・システムズ株式会社

人間の心臓は1日に平均115,200回鼓動しています。しかし実際には、「平均的」な心臓などありません。そのため、心臓手術が必要な場合にそれが成功するかどうかは、各患者に固有の人体構造を理解し、それに合った処置を施す外科医の能力にかかっています。

大動脈弁に異常が生じた場合は、弁置換術を施すことが重要です。それを行わなかった場合、平均で50%の患者が発症からわずか2年間で死亡することがわかっています。高齢の患者や重篤な患者にとって、従来の開心術(心臓切開手術)は選択できません。これらの患者には、経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)により、侵襲性の低いアプローチをとります。ただし、動脈にカテーテルを挿入して心臓まで通すという手技には、人工弁の接合が不完全であった場合に、脳卒中、血流低下や漏出などのリスクが伴います。

ベルギーに拠点を置くFEops社のMatthieu De Beule氏とそのチームは、TAVIの安全性を高め、患者の転帰(症状の経過、結果)を改善するための取り組みを開始しました。このチームは、高度な3Dシミュレーション技術を使用して、手技前後および手技中の支持構造(ステント)付き心臓弁機能のリアルで科学的に正確なモデルを作成することにより、医療機器企業が手術計画を個々の患者に合わせて調整し、機器の設計、安全性および有効性を改善できるようにしています。

FEops HEARTguideは、高度な計算モデリングを使用して、人工弁と特定の患者の人体構造との相互作用に関する術前の分析情報を、臨床医と人工弁メーカーに提供します。これにより、単なる解剖学的測定の結果のみならず、個別の患者に対する機器の相互作用も踏まえた正確な術前予測を検討できます。

De Beule氏は次のように述べています。「人工弁が個人の人体構造にどのように展開されるかについて、より深い洞察がもたらされるようになりました。経カテーテルデリバリーと弁の植え込み中、さらには患者の体内で新しい弁が機能し始めた後の動作も、人工弁の動作をシミュレーションによって予測できます」

拍動する心臓の内部でステントが受ける応力のシミュレーションは、エンジニアが設計を改良するのに役立ちます。(Image © FEops)

ソフトウェアの革新を継続することで、今後数年間でほぼリアルタイムのシミュレーションが可能になります。FEopsはこれらの改善を見据えて、その他の心臓弁置換術モデルを開発し、世界中の医師や医療機器メーカーに付加価値を示すための臨床的証拠を収集しています。

De Beule氏は次のように述べています。「シミュレーションを行うと、厳密な解剖学的測定を行った場合よりもはるかに正確な情報を収集できます。私たちは、この技術と個別化治療アプローチを心臓植込みデバイスだけではなく、シミュレーションフレームワークにも応用できると確信しています。こにより、医療機器の設計者が前臨床開発の早い段階に、リアルな患者の人体構造内を検証し、さまざまな新しい心臓血管製品を検討できるので、バーチャルな臨床試験への道が開かれます」

ダッソー・システムズは、3DEXPERIENCE Labを通じて FEopsをサポートしています

読者登録はこちら

ブログの更新情報を毎月お届けします

読者登録

読者登録はこちら