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エネルギー・資源・インフラOctober 26, 2013

テクノロジーによる鉱山業界の変革【COMPASSマガジン】

カナダのDundee Precious Metals社CEO Howes氏に聞く、テクノロジーを活用した鉱山業界の変革方法
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Avatar ダッソー・システムズ株式会社

Dundee Precious Metals 社の CEO、Rick Howes 氏は、鉱山業界にはとり戻すべき遅れがあると語ります。Howes 氏は、他の業界と比べ、鉱山業界はテクノロジーの採用において数十年遅れていると述べる一方、優れたツールとプロセスによって鉱山会社はオペレーションを管理することができる、との考えを示しています。


カナダに本社を置くDundee Precious Metals社のCEO、Rick Howes氏は、単に鉱山の産出量を増やすだけで収益をあげることのできる時代は終焉を迎えつつあると語ります。Howes氏は、採鉱によって得られる収益性に対するステークホルダーの期待は低迷し、業界が将来的な成功を収めるにはテクノロジーの活用が不可欠だと考えています。

鉱山会社は、コストの上昇と周期的に上下動する金属価格の下降局面を迎えるなか、細部にまで注意を払うことで、業務効率の向上と計画の実現に注力しなければならない、とHowes氏は述べています。「われわれは、株主から従業員、さらには事業を展開する地域社会といった各ステークホルダーが期待する形に沿って、価値を提供する必要があります。鉱山業はそのイメージと信頼性において課題を抱えており、鉱業資産のライフサイクル全体を管理するために、これまでとは異なる革新的な思考が求められています。」(Howes氏)。

33年の業界経験を持つベテランである同氏がDundee社のCOO兼エクゼクティブバイスプレジデントに就任したときの最初の課題の一つが、同社のブルガリアのチェロペチ鉱山でのオペレーションを活性化することでした。Howes氏の指揮のもと、Dundee社は卓越した業務効率を目指す「Taking the Lid Off」と呼ばれる業務改革に着手しました。

Howes氏は次のように説明しています。「地下鉱山の採掘穴は暗闇であることから、我々はこの取り組みを『Taking the Lid Off(暗闇に光をあてる)』と名付けました。穴の中は暗くて何も見えないため、その中で実際に何が起きているのかを誰もリアルタイムに把握していません。今後鉱山オペレーションを常時『可視化』できるようにする必要があるからです。」

テクノロジーが実現する卓越した業務効率

Howes氏は次のように述べています。「私は、Dundee Precious Metalsをリーディングカンパニー、つまりイノベーションの担い手にすることを目指しています。そのための課題は、当然ながら、我々の遂行能力を高めることです。」

Howes氏は、自身がまだ若き技術者であった頃、業務改善のためにテクノロジーに関心を持ち始めたと振り返ります。「業界は理想的に発展してきたわけではありませんが、今後、鉱山会社が適切な企業と連携することで、業界のあり方を大きく変えられると、非常に前向きに考えています」(Howes氏)。

優れた業務効率を実現するには、テクノロジーを使った革新的なアプローチが必要だとHowes氏は強調します。「『Taking the Lid Off』プロジェクトでは、地下鉱山のリアルタイムな生産管理を実現するため、たとえば低コストですぐに利用可能なWi-Fiネットワークや、車両と人員の位置追跡のための安価な無線RFIDタグ、さらにはソフトウェアシステムを使ったマッピング、モデリング、見積り、設計、スケジューリング、シミュレーション、生産管理レポート作成など、利用可能な最新のテクノロジーを活用しています。これらを通じ業務の管理手法を根本的に変革するのです」(Howes氏)。

Howes氏は、小さな誤りや判断ミスがプロジェクトの結果に大きな影響を及ぼしかねないと説明します。「鉱石の品位20%過大評価により、純投資収益率が20%以上低下する結果になることもあります。このような判断ミスは業界でも広く見受けられます。これは経験の度合いや、鉱山プロジェクトの検証や管理に用いられるツールと大いに関係があり、はるかに優れたツールやプロセスが求められます」(Howes氏)。

しかし、必要なテクノロジーのすべてが開発されているわけではないとHowes氏は指摘し、次のように説明しています。「ソフトウェアを開発し、技術要素を統合して結果を出すには、テクノロジーを提供する企業との緊密な連携が不可欠です。」

計算されたリスク

Dundee社のチェロペチ鉱山では、産出量の倍増と44%のコスト削減に乗り出しました。Howes氏は、同社が採用したテクノロジーにより、鉱山を絶えず3Dで視覚化できると述べています。

「『Taking the Lid Off』プロジェクトとは、要は計画を立ててそれを実行に移し、進捗状況をリアルタイムに追跡できるようにすることなのです。生産の観点から正しい過程をたどれるよう、必要な箇所を監視し、介入することで、現在の地下鉱山プロジェクトで見られる多くの無駄を排除します」(Howes氏)。

「ビジョンを持ち、適切な テクノロジーパートナーと 連携すれば、ビジネスのあり方を 変えることができます。」Rick Howes 氏
Dundee Precious Metals 社 CEO

Howes氏は次のように述べています。「当社は2003年に鉱山の所有権を得たときに設定した業績目標を達成しました。年間生産量は約50万トンから約200万トンへ、4倍に増えています。現在プロジェクトの最終段階に取り組んでいるところですが、この成功における重要なポイントは、可動式の新しい採掘機材を追加することなく100万トンから200万トンへの増産を実現したことです。これはすべて業務改善の結果なのです。」

コラボレーションの精神

チェロペチ鉱山は、非常に意欲的な鉱山プロジェクトとして成功事例です。Howes氏は次のように述べています。「ビジョンを持ち、適切なテクノロジーパートナーと連携すれば、ビジネスのあり方を変えることができます。簡単なことではありませんが、これまで他の業界で使われてきた先進的なテクノロジーを活用することで、その可能性が今、広がっているのです。」

ITツールは、鉱山プロジェクトの展開やオペレーションが適切に実施されているかを関係者に可視化するだけにとどまらないと、Howes氏は語ります。ツールによって経営陣も、莫大な投資を行う前に、求められる結果を鉱山設計によって無事達成できるという強い確信を得ることができる、と説明します。

Howes氏は、「鉱山業界はイノベーションを興し、創造性を発揮し、業務に対するアプローチを変革しなければなりません」と述べます。同氏は、企業が進んでテクノロジーベンダーと提携し、過去に検証や実践されたことのないアイデアを試すリスクを負うよう助言し、次のように強調しています。「すべての要素を備えている企業などありません。コラボレーションの精神が、当社のチェロペチでの成功の鍵でした。」

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