消費財August 19, 2020

透明性のあるサプライチェーン

農場から食卓までの可視性を追求する消費財企業
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Avatar ダッソー・システムズ株式会社

今日の消費者は、健康と社会的影響をますます意識して食品を選ぶようになっています。便利な加工食品よりも、高品質で新鮮かつ持続可能な農産物の人気が高まり、消費財企業には、自社製品が農場から陳列棚に並ぶまでのプロセスを透明化することが求められています。多くの消費財企業は、自社のオペレーションを変革しサプライチェーンを根本的に見直す必要に迫られています。


英国とオランダを拠点とするCPG(消費財)企業のユニリーバは、米国でポピュラーなマヨネーズブランド、Hellmann’s(ヘルマンズ)を製造しています。同社は2010年の時点で、2020年までに使用する卵のすべてを平飼い認証を受けた卵にすると発表しました。これは米国のサプライチェーン全体に大変な影響を及ぼしました。

2010年当時、米国の平飼いの雌鶏はわずか2%に過ぎませんでした。「ヘルマンズの製品には非常に多くの卵が使われており、米国だけで年間3億3,100万個が必要です。そのため、当社は目標達成のために自社のサプライチェーンを完全に構築し直さなければなりませんでした」と、ユニリーバのマーケティング・ディレクターを務めるRussell Lilly氏は述べています。それでも、同社はサプライヤーや動物保護団体と提携して米国の卵生産事業を変革し、計画よりも3年早く目標を達成しました。

責任ある卵の調達に向けて取り組んだ「ヘルマンズ」のケースのように、健康と社会への消費者意識の高まりが消費財企業のサプライチェーン変革を後押しすることは一般的になってきました。企業はサプライチェーンの構築にあたり、農場から食卓までの透明化という課題に対し、デジタル・テクノロジーを適用することで対応しています。

フランスのコンサルティング会社キャップジェミニで消費財・小売・サプライチェーンを専門とするLindsey Mazza氏は、次のように述べます。「消費者はますます、ブランドの持続可能性に対する取り組みと価値観に基づいて購入を決めるようになっているため、食料品店は消費財企業に対し、責任ある対応を求めています。消費財業界では、サプライヤーがサプライチェーンや調達に関する重要情報を小売店に提供できるよう、製品管理システムを導入する企業が増えています。これにより、農場まで遡る全過程の追跡が可能となります」

データによる品質の証明

米国の食品製造業者協会(GMA)とボストン・コンサルティング・グループによる、「」と題された2018年のレポートでは、78%の消費財企業が、エンドツーエンドのデータ(店頭データから配送に関するGPS追跡データまで)の可視性を優先事項としていることが分かりました。

「消費財企業は、需要予測と生産能力モデリングに予測分析を使用し、製造と流通の最適化にシナリオモデリングを使用しています」と、GMAレポートは述べています。「ジオアナリティクスがロジスティクスの流れと経路計画の改善および管制塔の構築を支援し、サプライチェーンにおけるエンドツーエンドの可視性を実現します。新しいデータアーキテクチャ(一部はクラウド内に構築)によりデータのシームレスなリンクが可能となり、企業は費用のかさむ冗長なERP (統合基幹業務システム) の導入を回避できます」

Amy’s KitchenはExcelのスプレッドシートを使っていましたが、日を追うごとに非効率になっていました。応答時間は遅すぎて、必要な変更は間に合いませんでした。さらに悪いことに、毎月のプランニング・サイクルが完了するのに6週間もかかることがありました。Amy’s Kitchenのシステムは、高まる複雑性にまったく対応できなかったのです。最善とは言い難いプランニング・プロセスが、同社の成長の妨げとなっていました。

「当社は、入り組んだ日程要件に合わせられるよう、サプライチェーンのプランニングと最適化を行うプラットフォームを必要としていました。製品を組み合わせて調理を同時に行うという当社独自のアプローチが必要だったからです」と、Amy’s Kitchenの共同設立者であるAndy Berliner氏は述べます。「ソフトウェア・プラットフォームを使用することで、当社の顧客が期待する高い品質と満足感の基準を維持することができるでしょう」

その結果は満足のいくものでした。Amy’s Kitchenはデジタル・プランニングの実装によりプランニングに関する目標を達成し、コストを削減し、可視性を高め、まったく新しいやり方で複雑な課題に対処することができました。事業上の利点に加え、Amy’s Kitchenの従業員エクスペリエンスも向上しました。日程計画が最適化されると、同社は従業員のワークライフの改善に取り組むことができます。同社にとっては、高品質の食品を生産するだけでは十分ではなく、これらの食品を生産する労働エクスペリエンスの質も同等に高くなければならないのです。

分析がインサイトを生む

これらのシステムの稼働に必要なデータもまた、デジタル化されています。工場での加工情報、配送中の温度、集荷と配達の日時、販売期限や使用期限、その他たくさんの指標をセンサーが追跡します。しかし、出荷が遅れたり、温度が長時間規定範囲外になっていたり、リコールが必要であるなどの場合に素早く対応するには、データにリアルタイムでアクセスして、クレンジングを行い、分析し、際立たせることで重要なインサイトを導出することのできる報告システムが必要です。これは、人工知能(AI)がますます重要な役割を果たすようになることを意味します。

分析調査会社のIDC Manufacturing Insightsでサプライチェーン戦略プラクティスを率いるSimon Ellis氏は、次のように述べます。「AIは人材の補充に使われるようになります。消費財企業がいっそう多くのデータを処理するようになると、それらがもたらす情報を見てそれに基づいて行動するための監視が必要となるでしょう。AIは企業が必要とする付加的資料を提供します。それがなければ、データは無駄になってしまいます」

食品・飲料企業は需要を予測し、生産能力とシナリオのモデル化により製造、販売、流通を最適化します

消費財企業がいかにデータを収集し利用するかは、競争上の差別化要因になるとEllis氏は予想します。「データにうまく利用できる企業が、よりよい業績を上げるでしょう。サプライチェーン全体の可視性は、データなしには達成できません」

基本に立ち返る

消費財企業への需要が増大するにつれ、サプライチェーンの複雑性に取り組むという基本に立ち返り、プロセスにおけるいっそうの持続可能性を実現している企業もあります。

「強い倫理性と全体的透明性、持続可能なビジネスモデルをもって消費者にアピールする新たな独立系消費財企業により、巨大な多国籍企業が市場で苦戦しています」と、キャップジェミニのMazza氏は述べます。「簡素化されたサプライチェーンを持つそれらの企業は、製品をはるかに素早く市場に出すことができ、消費者の要望にうまく応えることができます」

たとえば、英国のスムージー・ブランドであるInnocent Drinksは、シンプルで自然由来の健康な飲み物により評判を高めてきました。同社の使命は、消費者の健康を増進する、おいしい製品を作ることです。使命の実現に向けていっそう努力するために、同社は最近、国際的非営利団体B Labが運営する任意監査制度で「B Corp」の認証を取得しました。これは、食品の品質だけではなく従業員、顧客、コミュニティ、環境の点からも企業の影響を評価するものです。

Innocent DrinksのCEOであるDouglas Lamont氏は、ロンドン イブニング・スタンダード紙による最近のインタビューで次のように述べています。「当社はよい企業であろうとし、正しいことを行うことで成長できることを証明したいと考えています。そして、他社が後に続くことを願っています」。同社がレインフォレスト・アライアンスなどの独立系環境・社会団体による認証サプライヤーを好み、認証を受けた果物にプレミアム料金を支払っているのもそのためです。  

消費者の信頼を築き、消費者が社会に対していっそう責任ある行動をとれるように支援することで、企業は人々とこの地球を利益と同じように尊重し、持続可能な資本主義を機能させることができます。

「現在、食品に関して消費者が望むことはスピード、誠実さ、透明性です」と、Mazza氏は述べます。そのため消費財企業は、自社が持続可能な原料を使用し、自社のサプライチェーンのどの側面でも持続可能な慣行を実践していることを、リアルタイムで届く認証データにより証明しなければなりません。

「いかにして自社のブランド価値を明確に表現し、地球環境保護にどのように役立っているかを証明し、自社製品の特徴を消費者にどのように伝えるか、消費財企業の手腕が問われています」とMazza氏は述べます。「テクノロジーを活用すれば、自社のサプライチェーンをよりしっかりと把握し、持続可能で追跡可能かつ望ましい製品を作ることができるのです」

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