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January 9, 2026

建設の“プロダクツ化”がもたらすインパクト ―統合された建設モジュールが変える役割と責任

建設業界ではいま、コスト効果の高い建築物、迅速な引き渡し、高度なカスタマイズ、そしてサステナビリティへの要求がかつてないほど高まっています。
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Avatar溝口 愛梨 (Airi Mizoguchi)

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建設業界ではいま、コスト効果の高い建築物、迅速な引き渡し、高度なカスタマイズ、そしてサステナビリティへの要求がかつてないほど高まっています。
一方で、熟練労働力は不足し、従来の職能ベースのプロセスだけでは、増え続けるプロジェクト需要をさばき切れなくなりつつあります。

その結果として、ゼネコンも専門工事会社も、そして施主も、

「このままでは限界が来る」

という危機感を共有し始めています。

こうした状況の中で注目されているアプローチが、「プロダクツ化(Productization)」です。


なぜ“工業化”だけでは足りないのか

なぜ“工業化”だけでは足りないのか

この10年で、建設業界は製造業から多くを学び、

  • デジタル設計
  • オフサイト建設
  • プリファブ工法

などを取り入れて生産性向上に取り組んできました。しかし、大量生産を前提とした従来の「工業化」には、建設ならではの特徴に対する限界があります。

  • 建設は プロジェクト単位・一品生産
  • 各プロジェクトごとに 立地条件や施主要望が大きく異なる
  • ほとんどの場合、初めて組む職能チームで現場を動かす

つまり、自動車工場のように「同じものを大量に作る前提」でプロセスを最適化しても、建築の現場にはそのまま当てはまらないのです。

プリファブ工法も、

  • 天候に左右されない
  • 品質の安定
  • 熟練工は工場内に集中、現場は組立中心

といったメリットをもたらしますが、物流制約や現場との二重管理、複数職種が交錯する“財務上の落とし穴” という新たな課題も抱えています。

職人依存の方針に潜む財務上の落とし穴

プロダクツ化とは何か

――「統合された建設モジュール」を中心に考える

そこで登場するのが、ホワイトペーパーで提唱している 「統合された建設モジュール」 を中核としたプロダクツ化の考え方です。

統合された建設モジュールは、次のような特徴を持ちます。

  • 複数の専門工事を含む 複合職能アセンブリ
  • 他モジュールや建物構造とつなぐための 標準化されたインターフェース
  • さまざまな案件に対応できる 派生部材の生成(バリエーション展開)
統合された建設モジュールの3つの要素

これらのモジュールを プロジェクトとは切り離された「プロダクツライン」としてオフサイクル(別チーム)で管理 することで、

  • 複数プロジェクトにまたがる再利用
  • 高いカスタマイズ性
  • 品質やコストの事前コントロール

を同時に実現していく──これが 「プロダクツ化がもたらす建設の効果」 です。


役割と責任はどう変わるのか

プロダクツ化が進むと、建設バリューチェーンの各プレーヤーの役割・責任も大きく変わります。

建設バリューチェーンの進化

施主(オーナー)

施主は、単に仕様を提示して建物を発注する存在から、モジュール要件を定義し、自社のビジネス成果に直結するコンポーネントを共創するパートナー へと変化します。

  • データセンター施主:自社モジュールの設計・製造による竣工までの時間短縮
  • ホテルチェーン:浴室ポッドなどのモジュールを通じたブランド体験の統一 など

ゼネコン:プライム・インテグレーターへ

ゼネコンは、単能工を前提とした調整役 から、統合された建設モジュールの「プライム・インテグレーター」へと進化します。

  • モジュールの調達
  • 現場物流の設計・調整
  • 設置・統合プロセスの責任

といった役割を担い、調整不備による財務上の落とし穴を回避しつつ、施主に一貫した価値を提供していく立場になります。

専門工事会社:バーチャル(仮想)メーカーという新しい顔

専門工事会社は、現場で施工してはじめて対価を得る立場から、職能固有のノウハウをデジタル化して提供する「バーチャル(仮想)メーカー」という新たなビジネスモデルを手に入れます。

  • 上流の設計・シミュレーション段階から、建設バーチャル・ツイン上で知見を提供
  • BIMプラグイン等を通じて建設可能性や標準ディテールに反映
  • 施工前の 「バーチャル制作」への貢献に対しても収益化 が可能に

これにより、「現場に呼ばれるかどうか」に左右されない、より戦略的な関わり方 が見えてきます。

小規模(仮設)工場

さらに、建設現場近くで統合された建設モジュールを製造する「小規模(仮設)工場」というプレーヤーも新たに登場します。

  • 標準化されたインターフェースとモジュール・プラットフォームに基づき、複数クライアント向けに製造
  • 現場への短距離輸送+熟練度の浅い労働者でも施工可能なモジュールを提供

小規模(仮設)工場は、変化の激しい建設業界における 「新たな価値の貯蔵庫」 として期待されています。

変革の流れ

BIMから「建設バーチャル・ツイン」へ

BIMは、これまで建築家やエンジニアにとって不可欠なツールでしたが、ゼネコンや専門工事会社のニーズを完全に満たしているとはいえません。

そこでホワイトペーパーが提案しているのが、「建設バーチャル・ツイン」 という考え方です。

  • 建物の物理的なプロセスやコンポーネントをデジタルで表現
  • 設計・エンジニアリング・製造・施工・運用までを一つのモデルで管理
  • 現場からのフィードバックを即座にモデルへ反映し、「建設前に建設を確約する」

ことを目指します。 3DEXPERIENCE® プラットフォームは、この建設バーチャル・ツインとプロダクツ化を支えるエンドツーエンドの連携基盤として位置付けられています。


プロダクツ化が開く、新しい建設のかたち

まとめると、プロダクツ化は次のような価値をもたらします。

  • 単純な工業化では対応しきれない 高度なカスタマイズと拡張性
  • 単能工の障害や調整不備による 財務上の落とし穴の回避
  • バリューチェーン全体を通じた 新しい役割・ビジネスモデルの創出
  • 建設バーチャル・ツインによる 「仮想で検証してから現場で建てる」ワークフロー

建設業界が直面するスピード・持続可能性・カスタマイズ の要求に応えるためには、単にプリファブ工法やデジタルツールを部分導入するのではなく、建設そのものを「プロダクツ化」という視点から捉え直すことが重要になってきています。

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もっと詳しく知りたい方へ

本記事は、ホワイトペーパー『プロダクツ化がもたらす建設の効果 ― 統合された建設モジュールによる、ゼネコン、専門工事会社と建設バリューチェーン全体の役割の転換』の内容を抜粋してご紹介したものです。

より詳しい事例やコンセプト、各プレーヤーの具体的な変化については、ぜひ本編をご覧ください。

ホワイトペーパー『プロダクツ化がもたらす建設の効果 ― 統合された建設モジュールによる、ゼネコン、専門工事会社と建設バリューチェーン全体の役割の転換』

次回のブログでは、プロダクツ化と並行して進むリーン・コンストラクションや建設バーチャル・ツインとの関係についても取り上げていきます。

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