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Design & SimulationAugust 29, 2025

ボストンの心臓外科医がエンジニア・チームを採用した理由とは

医師とエンジニアが協力してバーチャルツインを作成し、精密かつオーダーメイドの医療という新時代を切り開きました。
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Avatarダッソー・システムズ株式会社

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※本ブログは、SIMULIA Blog (英語版)で既に発表されたブログの日本語参考訳です。

ボストン小児病院で小児心臓外科医として勤めるDr. David Hogansonは、リスクが高く、最も治療が難しい患者を担当する外科医チームの一員であり、綿密な執刀計画と最高レベルの専門知識を必要とする手術を毎年何百件も行っています。

心臓は複雑な臓器であり、特に子供の心臓は非常に小さく、新生児の心臓はクルミほどの大きさしかありません。何十年もの間、外科医は手術室の中で寝ている患者を目の前にしながら意思決定を行ってきました。しかし、Dr. HogansonとPeter Hammer氏が率いる生体医工学チームはより良い方法があると考え、最先端のバーチャルツイン技術(virtual twin technology)を手術前のプロセス検討に適用し始め、手術の成功率を改善してきました。

Dr. Hogansonと彼のチームは、過去 5 年間にわたり、通常は航空宇宙産業や自動車産業で活用されるテクノロジーを利用して、患者が手術室に運び込まれるずっと前に、具体的で患者中心に考えられた手術のロードマップを作成してきました。

現在、ボストン小児病院でコンピューターによる3D 視覚化プログラムのディレクターを務めるDr. Hogansonにとって、仮想的に治療計画を立ててテストすることは、「願望的なものではなく、正確な計画をもって」治療を行う機会です。

バーチャルツインを医療現場で活用する

ダッソー・システムズが主導する、人間の心臓のデジタルモデルを開発する国際的な取り組みであるリビングハート・プロジェクト(the Living Heart Project)に参加しているDr. Hogansonは、これまでにやったことのないことをしようと決意しました。彼とHammer氏は高度なシミュレーション技術を医療分野に導入するためにエンジニアのチームを採用し、患者それぞれの心臓の 3 次元モデルを作成することで、小児手術の成功率の改善に取り組みました。

Dr. Hogansonは、今年初めに開催された the ninth annual Virtual Human Twin Experience Symposium でチームの進捗について語りました。

「私たちは素晴らしいプロフェッショナルなエンジニア・チームを揃えています。彼らの仕事は非常に高度なCAD ツールを利用して仮想手術、手術フローのシミュレーション、有限要素解析を実行できるように患者それぞれに合ったモデルを作成することです」とDr. Hogansonは述べます。 「これは心臓センターにとって変革であり、これらの技術のいくつかが他の科でも使用され始めていることを嬉しく思います。」

ダッソー・システムズとの協力により、Dr. Hogansonは患者中心かつ患者固有のモデリングとシミュレーションの開発に集中し、「夢にも思わなかったペースで進歩」することができました。

「最もリスクの高い患者には、経験を超えた綿密な手術計画が必要です」と彼は言います。 「より良い計画はより良い臨床結果をもたらします。このテクノロジーを使用すると、私たちが制御できるものを可能な限り完璧にすることができます。」

医療におけるバーチャルツイン: その仕組み

エンジニアは3DEXPERIENCEプラットフォーム( the 3DEXPERIENCE platform)を使用して、特定の心臓欠陥を示すバーチャルツインを作成し、Dr. Hogansonと彼のチームが患者固有の行動計画を考案し、実践できるようにします。

このプロセスは、患者の心臓の CT スキャンまたは MRI 検査から始まります。 3D モデルは、セグメンテーションと呼ばれるプロセスを通じて作成されます。心臓の各領域は異なる色で表示されます。外科医は、モデルのコンポーネントをオンまたはオフにして、解剖学的特徴の断面図、外部ビュー、または内部ビューを表示できます。

一例として、僧帽弁と肺動脈弁の間にさまざまなサイズの穴がいくつかある子供には、大動脈を拡張して穴を閉じるためのパッチが必要になり、パッチには血流の圧力に抗して伸びるのに十分な強度と柔軟性が必要とされます。

Dr. Hogansonはこう説明しました:「問題は心臓手術をするとき、または大動脈や肺動脈を再建するときに、すべてがゼロの圧力、つまり弛緩した状態になることです。それはターゲットとしているサイズや形状ではありません。」

「ダッソー・システムズのモデリングおよびシミュレーション向け製品群であるCATIAとSIMULIA を使用して、最初は平らなパッチ素材が患者固有のニーズを満たす正しい形状に折り畳まれるようにした」

3DEXPERIENCEには、航空宇宙産業向けに構築された驚異的なアルゴリズムがあり、それを心臓手術において、パッチの機械的特性を組み込んでパッチを平らにするために使用しています。これまで、どのように曲がるか、どれだけ曲がるかについて外科医が必要とする情報はありませんでした。」

「パッチをカットするとき、ほとんどが推測で行われてきました。しかし現在は、理論的に正しく曲線を描くことができます。パッチは座屈することなく、適切なサイズとなります。私たちは、3DEXPERIENCE プラットフォーム内の多数の高度な航空宇宙ツールを使用するワークフローで、これを実現することができました。」

もうひとつの事例は、術前計画および手術ガイダンスのための患者固有の僧帽弁モデルの開発です。

チームは心室、心房、血管のモデルを900以上持っているものの、弁のモデルは欠けていました。「この分野にとって技術的に大きな課題となっている」とDr. Hogansonは話しました。現在、エンジニアリング・チームは、独自の技術を使用して患者固有の僧帽弁モデルを作成し、弁疾患のさまざまな側面を含む詳細な 3Dマップを作成しています。

「それは変革的なことでした」と彼は話ました。 「弁手術の実施方法のパラダイムが変わりつつあります。」

医療におけるバーチャルツインで治療を進め、人生を変える

Dr. Hogansonによると、以前はこうした複雑な再建手術中に心臓の電気系統に損傷が起こる確率は40%程度に達し、生涯ペースメーカーが必要となったという事例があります。現在では手術の精度が向上したことにより、最終的に患者の人生の見通しを改善するより良い結果につながっています。

過去 5 年間にわたり、ボストン小児病院の心臓科チームは、生命を脅かす疾患を持つ幼い患者のために 900 人を超えるバーチャルツインを作成してきました。これにより、他の心臓専門医や外科医を含むチームベースのアプローチが可能になり、患者の家族が理解して受け入れられていると感じるようになりました。

「私たちが何十年もやってきたことですが、やりながら計画を立てるのではなく、よく練られた計画を立てて取り組むというのは、まったく驚異的だと言えます」とDr. Hogansonは言います。 「私には患者に対して可能な限り最高の手術を行う義務があります。何が可能なのかを知った以上、もう他の選択肢はありません。」

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Melissa Russell

Melissa Russell氏は、ボストン地域に住む受賞歴のあるジャーナリスト兼編集者です。彼女は多くの報道機関だけでなく、ウェブサイト、業界紙、その他のプラットフォームにも執筆しています。


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